小樽の皆さま、小樽出身の皆さま、小樽ファンの皆さまへ! 自立した小樽を作るための地域内連携情報誌 毎月10日発行
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観光学(26) 観光を読む

地域が主導する自律的観光
北海道大学 観光学高等研究センター
センター長・教授 石森 秀三


震災後、観光客が減った小樽運河
震災後、観光客が減った小樽運河

9・11と3・11
 2001年9月11日に米国で発生した同時多発テロは世界中に大きな衝撃を与え、その後「9・11」が合言葉になった。9・11は「第四次世界大戦の始まり」を意味するという見方もあれば、9・11はそれまで米国を中心にして動かされてきた「世界政治経済の構造が変わる兆し」という見方もあった。現にその後BRICs諸国の著しい台頭に象徴されるように米国一極集中構造は大きく変化し、G20諸国の意向を無視して世界は動かなくなっている。いわば9・11がその後の世界の政治・経済・文化構造を大転換させたわけである。
 大震災は原発事故を併発し、地域住民に「大地震、大津波、原発事故、風評」による被害という四重苦を与えるとともに、世界中にあたかも日本全体が「放射能汚染」を受けているかのような衝撃を与えた。この「負のイメージ」は観光立国を進める日本に大きなダメージを与えており、インバウンドに陰りが生じている。また東京電力の供給力の弱体化によって、首都圏を中心にして国民生活が不自由になるとともに生産力の著しい低下が生じている。その結果、原子力発電をめぐる問題がさまざまな論議をよぶことは必至だ。
 9・11が世界の政治経済構造を変化させたように、3・11が日本人のライフスタイル・イノベーション(暮らしの革新)を促す可能性は非常に高い。今後3・11に伴って、日本人の暮らしのあり方が大きく変化することが予想される。

コミュニティーパワーと自律的観光
 昨年9月にカナダのモントリオールで「世界エネルギー会議」が開催された。世界エネルギー会議は1923年に設立された非営利組織で93カ国の約三千団体が加盟しており、すべての種類のエネルギーをめぐる問題を扱う世界で最も影響力の強い組織だ。モントリオール大会のテーマは「今こそグローバルチャレンジ!:かけがえのない地球のためのエネルギーの選択」であった。
 その会議で地域社会が自然エネルギーに力点を置いてエネルギー主権を取り戻すための「コミュニティーパワー三原則」が採択された。@地域社会がオーナーシップを持つこと、A経済的・社会的な便益が地域社会に還元されること、B意思決定のプロセスが地域に開かれていること、という三原則である。
 日本ではこれまで地域観光は旅行業・宿泊業・運輸業を中心にして推進されてきた。今後もそれらの業者が推進する「他律的観光」は重要であるが、3・11によるライフスタイル・イノベーションを考慮すると、旅行者や地域社会が主導する「自律的観光」がより重要になる可能性が高い。大震災被災地域においても地域復興を軌道に乗せるためには地域主導による自律的観光の振興が不可欠になる。北海道の各地域は「自律的観光の先進モデル」を構築して、震災復興に貢献することが期待されている。