小樽の皆さま、小樽出身の皆さま、小樽ファンの皆さまへ! 自立した小樽を作るための地域内連携情報誌 毎月10日発行
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COLUMN

コラム
NPO法人 小樽民家再生プロジェクト
編集人 石井 伸和


旧渡辺邸
旧渡辺邸

契機
 札幌の不動産調査会社 株式会社補償セミナリー専務取締役 中野むつみ氏が友人を介して私を訪ねられた。「石井さん、私の動いている札幌周辺には、小樽に住みたいというニーズが結構あるのです」という一言から、そういうアンテナを持っている方々で小樽移住促進を図る運動をしようと相成った。
 そしてNPO法人「小樽民家再生プロジェクト」という名で、現在道庁に申請を出し、秋には認可の予定だ。

需要者
 札幌在住の勤労者は北海道自体が支店経済であることから、転勤族も多い。この転勤族に小樽に住んで札幌に通うニーズがあるという。小樽は住むには実に良い条件を備えているともいう。海と山の自然が豊かで、食べ物も美味しく、歴史的な遺産も豊かで、それらが小樽モデルで観光拠点として活用され、コミュニティも多いことが理由だろう。彼らは仕事をする労働人口だから経済的に小樽にも貢献してくれる。
 そしてもう一つの需用者の核として大都市圏の退職する団塊の世代に目を付けた。彼らは日本史上稀な特性を備えている。日本の国際化の先兵となり、音楽のロック、ジャズ、ブルース、フォークなどの和製バージョンをこしらえ、以後の若者に多大な影響を与えた。次にIT活用の先兵をも担い、経済や文化の様々な変革を遂行してきた。そしてダブルインカムという夫婦共稼ぎを常態化し男女平等を実践し、決して成金趣味には走らずセンスの良いファッションの創造者でもあった。そんな彼らが退職され現役を離れるに際し、「人工化された都会を脱し住みたい地域に移住したい」という住む自由を最初に獲得した層でもある。

供給側
 小樽への住み方にはいろいろあるだろう。マンション、アパート、一軒家、別荘、コンドミニアム、シェアハウスなどだが、目玉として目を付けたのが歴史的建造物である。なぜなら平成4年に日本建築学会北海道支部が小樽市内で、戦前に建てられ歴史的意匠を伴った歴史的建造物が2,357棟もあったからだ。
 そしてNPO法人歴史文化研究所が本年、その2,357棟の現存確認の調査をした際、この20年間で1,232棟が消失してしまっている事実が明らかになった。この20年間に補助金が下りて修復できたり、運動の盛り上がりで消失が防げたり、さらには小樽モデルとして観光施設化されるという成果があったにせよ、半分以上の52.2%がもうないのである。

現存の状態
 現存物件1,090棟のうち、神社仏閣や公共建築が84棟あり、住宅再利用可能物件は1,006棟となる。しかし中には木造の倒壊寸前のもの、住宅にはおよそ相応しくない工場などもあり、さらに限られてくることが予想される。
 そして最大の問題は所有者の意向だ。まして現在もその建物に住まわれておられる場合も多い。とすると「是非そんな需要があるなら市場に出してもいい」といった積極的な意向がなければならない。そうなるとかなり低い確率で積極的意向を持つ物件しか抽出されない。ただし今後なんらかの事情により所有者が変わる場合もあることから予備軍のポジションにあるものは多数存在する。

貢献
 これらの物件がリストアップされ、現場調査を踏まえて市場に浮上する。我々が予想するようにターゲットがそれらの物件を居住用に改築し、壊されることなく保存されることになれば、これまで誰も想像していない民間資金による保存になる。
 さらにおもしろいのは「ライフスタイルの確立」を目指して居住される人々の存在だ。彼らは労働生産人口ではないので、資本の論理や政治の論理、あるいは大都市の論理といったヒューマンスケールを度外視する論理には左右されない。あくまでも「自分らしい」暮らしの実現を目指している。高度経済成長に乗り遅れた小樽が一周遅れのトップランナーとして、自己実現生活のモデル都市になる可能性だ。