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地産(36) 後志でなにが生産されているの

ヒメマス
野村商店
代表 野村 佳寿 氏



養殖池
養殖池
野村商店は漁業から
 野村家の祖父、甚作さんは古平町で昭和初期、漁業を営んでいたが、この頃、鰊漁も衰退期となり、漁業からニジマスの養殖業に転換した。昭和の初期はまだまだ養殖業が少なかった時代。チャレンジ精神旺盛の祖父で、思い切った転換だった。
 当時、養殖されたニジマスは食用としてより、各地の釣り堀が主な出荷先だったという。今では少なくなった釣り堀だが、当時は手軽なレジャーとして釣り堀は多かった。ほどなく、養殖業は2代目である父、石雄さんに引き継がれ、ヒメマス養殖への取組みとなる。

燻製
燻製
ヒメマスとは
 ところでヒメマス(姫鱒)とは、サケ目サケ科の淡水魚の一種で、湖などに残ったものをいう。海に下ったものはベニザケになる。北海道ではアイヌ語で「薄い魚」を意味するカパチェプのうちの魚を意味するチェプが訛った「チップ」の名でも呼ばれている。支笏湖では6月に解禁され、釣り人を楽しませてくれる希少価値の高い魚で高級魚となっている。

甘露煮
甘露煮
道内では唯一のヒメマス養殖家
 昭和40年代、恵庭市の道立水産孵化場が各地の養殖家にヒメマスの受精卵を提供したのがヒメマス養殖のきっかけ。ところが、孵化させるところまでは問題なかったが稚魚から成魚への段階に入ると、これまでのニジマス養殖とは全く違い、次々と死んでいく姿を見る日が続いた。ニジマスとは同じ淡水魚でサケ科の魚だが、ヒメマスは非常にデリケートで弱い体質だった。
 養殖場は古平町内を流れる沢、「チョペタン川」から水を引き込み、掛け流し状態で養殖池を管理している。大小20面近くの池に1年魚、2年魚、3年魚など約7万匹を分けている。当初は出荷できる3年魚にまで育てるのに試行錯誤の連続だった。餌、水温、酸素濃度など、これまでとは全く違う養殖技術が求められた。特に夏場の高温期と大雨時には小まめな管理が要求される。
何とか成魚を出荷できるようになったのは15年後の昭和59年だった。研究と失敗の繰り返しで何度も辞めようと考えたが、この日を迎え、続けることを決意した。この間、各地の養殖家は、次々とヒメマスの養殖を断念していったという。

ビン詰め(姫そぼろ、昆布姫)
ビン詰め(姫そぼろ、昆布姫)
野村家3代目も養殖家へ
 一方、佳寿さんは東京での大学生活を終え、そのまま、東京で大手電気関係の会社へ就職。しばらくはサラリーマンを続けていた。常々、海外での工事現場を希望していたが叶わず、古平町の父の仕事を継ぐことを考え始める。ところが父石雄さんは猛反対。苦労することがはっきりと見えているからだった。また、佳寿さんの妻は九州出身。雪深い古平町での生活に不安を感じていた。しかし、子供の頃、遊び場だった養殖場が思い出され、心の中では養殖場を継ぐことは決めていた。父や妻を説得し了解をもらうまで2年を要したという。そして30歳で古平町に戻り、父のもとで修業が始まった。

いろり焼き
いろり焼き
自分だからできること
 あれから14年。父からヒメマスの養殖技術を学び、経験を積んできた。この間、野村商店が大きく変わったことは、直売を始めたこと。鮮魚としての出荷だけでなく、加工して付加価値を高めることにチャレンジしてきた。甘露煮は佳寿さんの妻が担当。燻製は余市の南保留太郎商店(2010年3月号掲載)に自ら出向いて修行に入り、本格的な燻製作りを学び、製品化した。またそぼろのビン詰製品などギフト需要にも対応できる製品も登場した。これらは鮮魚を出荷できない時期の売上の核となるばかりでなく、古平町の「野村商店」をアピールする製品として貢献している。ヒメマスは一般には馴染みのない魚。しかし、このおいしさを伝えるためにはどうしたらよいのか。自分にできることは何か。その答えの一つが加工品だ。生産者が自ら加工し、自ら販売する。生産者の顔が見える商品となっている。

もう一つの取組み
 佳寿さんは数年前からヒメマスのおいしさを味わってもらうため、店頭でのいろり焼を始めた。1時間かけてじっくりと炭火で焼いた味は旨味たっぷりで格別。味は5種類を開発。中でも、若い人の目にも留まるようにと開発したガーリックハーブ味のいろり焼は、平成23年、第18回北海道食品加工のコンクールで「優秀賞」を受賞した。これまで父が苦労して確立した養殖技術が報われた出来事だった。
 現在も各地の有名レストランやホテル、旅館へ鮮魚として出荷しているが、今後はもっとこの味を知ってもらうため、本州への営業活動に力を入れたいという。
 古平へ行く際は、野村商店に立ち寄り、ぜひこの上品な味を堪能してほしい。

野村商店
〒046-0121 北海道古平郡古平町浜町43
TEL (0135)42-2075 FAX (0135)42-2123
http://www.ne.jp/asahi/himemasu/hokkaido
E-mail:himemasu@shop.email.ne.jp
営業時間 9:00~17:00 水曜定休日
*いろり焼は土日のみ(期間限定のためお問合せください)
*余市より国道229号、古平町役場T字路を左折、すぐ右折し右側。(中央旅館の裏手)
*お買い求めは、来店またはホームページ、FAX、メールなど。