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地産(46) 後志でなにが生産されているの

フルーツトマト「愛してアイコ」
株式会社 嶋田茂農園「匠」
代表  嶋田  茂 氏



ミニトマトの生産地…仁木町
 後志のミニトマト作付面積は道内第1位(振興局別)。およそ全道の34%を占めている。その中でも仁木町は有数の生産地。寒暖の差が大きい気象条件を生かし、糖度が高く果汁に富んだミニトマトを生産し、高い評価を受けている。栽培されているのは主にキャロル7という品種で、果実は肉厚、高鮮度で食味が良く、果実は照りがあり、果色が鮮やかなもの。

嶋田茂農園
 嶋田さんは農園の3代目。農業は祖父の代から始まった。当初は水田とリンゴが主だったが、その後ブドウ栽培も手掛けるようになった。現在のようにアイコ(トマト)を生産するようになったのは、ある災害がきっかけだった。
 平成16年9月8日、後志地方を襲った台風18号は瞬間最大風速50mを超す猛烈な風台風として、この地域を通過した。果樹栽培が主体の余市、仁木に大きな被害をもたらした。嶋田農園もブドウの木、倉庫、農業機械などが被害を受け、嶋田さんは途方にくれたという。更にその年と翌年は大雪に見舞われ、遂にブドウを諦めることになった。そこで心機一転、トマト栽培に切替えることになる。この時、仁木町ではすでにミニトマトが盛んに栽培され、トマト生産組合もあった。ところが他の生産者が手掛けている丸玉の品種ではなくアイコに取り組むこととなる。今から9年前のこと。

独立した個性…アイコ
 実はミニトマトといっても、様々な品種がある。流通過程ではそれら様々なトマトを総称してミニトマトと呼ばれる。ところがアイコだけは独立した名前を持ち、他のミニトマトとは違う存在感があった。9年前はアイコが登場した年で、トマト栽培をするなら他と差別化できるこの品種にしようと決断した。このようなトマトの流通事情を知っていたのは、嶋田さんが長い間、青果の配送で頻繁に市場に出入りしていたからだった。市場での流通や取引価格など、一農家では経験できない貴重な時間を過ごしてきた。今もこの時の経験は生かされている。

アイコの栽培
 災害で被害を受けたブドウ畑をつぶし、37mのハウスを3棟建て、約1,000本のアイコを栽培した。収穫したアイコは自ら市場へ持ち込み取引してもらった。当時はアイコの流通量は少なく、それなりの価格で取引が続いていった。ところが、嶋田さんは全く納得していなかった。それは、消費者の立場になった時、この味でいいのか、という疑問が沸いたのだった。アイコという品種からすると十分おいしいのだが、糖度を上げることができたら、もっとおいしくなるのではないか。これまでの農業の経験や知識を生かし、ある時、あるものを与えてみたら数段おいしくなり、嶋田農園だけのアイコの味になった。これは今も企業秘密とのこと。
 更においしくなったアイコは価格も順調に推移し、ミニトマトの取引価格を逆転するまでになった。
 ところでアイコという名称だが、諸説あり、種を開発した方のお孫さんの名前から付けられたという説と、皇室『愛子さま』のご生誕近くに誕生したトマトだからという説があるらしいが定かではない。

組合設立
 その後アイコは本州での需要も増え、生産量も順調に伸びていった。5年前、町内では嶋田さんに栽培指導を仰ぎ、10軒の農家がアイコを生産するようになり、仲間とともに11軒でアイコ生産組合を設立した。1年目の出荷額が約5,000万円、その後組合員数も26軒となり、順調に出荷額は伸び、5年目の今年は3億円を目指すという。4年前からは、組合生産のアイコをブランド化するために「愛してアイコ」という名称で出荷するようになった。パッケージにもロゴを入れ、緑色が目立つデザインとなっている。この名称と箱の色が仁木町のアイコである印ということだ。

やさしい味
 嶋田さんが最初に取り組んだアイコは今、組合員全員のブランドとして本州各地へ出荷されている。組合設立当初からこだわっていることは、全員が厳しく品質管理し、糖度8度以上で同じものを生産できること。工業製品なら、ある程度均一に製造することができるが、26軒が同じ品質で生産することは大変なこと。そのためには1軒ずつ回り栽培指導を続けていることと、今も勉強会を行っている。
 また、嶋田さんのアイコはトマトジュースとしても販売されている。規格外品のアイコを使用するのではなく、ジュース専用のハウスで栽培された生食用アイコで、180ml1本にアイコを17~18個使った濃厚な味。1本1,000円以上する高級品だが、関東を中心に出荷されている。
 嶋田さんは言う「私の最大のこだわりはトマトをとことん勉強し愛することと、消費者の立場で生産すること。この二つが間違いなくトマトをおいしくするんです。」

株式会社 嶋田茂農園「匠」
〒048-2411 余市郡仁木町東町9丁目42番地
TEL&FAX 0135-32-2225
*嶋田茂農園のアイコは様々なネット通販で紹介されています。検索してご確認ください。