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観光学(6) 観光を読む

自律的観光の時代
北海道大学 観光学高等研究センター 
センター長・教授 石森 秀三



日本の観光が変わる
 日本の観光旅行のあり方は、1990年代に大きく変化しました。その原因は、バブル経済の破綻による日本人の生活意識の変化とインターネット革命の影響に求められます。インターネット利用者が増えることによって旅行者自身が旅行を企画し手配し実施できるようになり、旅行会社に頼らずに観光旅行ができるようになったわけです。
 20世紀の日本における観光旅行は基本的に「団体旅行」「名所見物」「周遊」という三つの要素で成り立っていました。90年代までは団体でいくつもの名所を周遊して見物して回るというパッケージツアーが主流であり、旅行会社や観光開発会社が長らく日本の観光を主導してきました。
 米国の観光学者は日本の旅行会社によるパッケージ旅行商品づくりを「芸術的」と評するほど、細やかなツアー造成が行われていました。そういう意味で、日本の旅行会社は優れたパッケージ旅行商品づくりにおいて、世界の頂点に立っていたということができます。
 旅行者や観光地域の側からみますと、20世紀の日本観光は旅行会社や観光開発会社に依存する「他律的観光」が一般的であったといえます。ところが90年代に入ってから、インターネット革命によって旅行者が自律的に観光旅行を企画し実行できるようになるとともに、そのような自律的な旅行者に対応して、訪問先の観光地域も積極的に情報発信を行うようになり、旅行者の受け入れを自律的に行うようになりました。旅行者と地域がともに「自律的観光」の方向に動き始めたわけです。

他律的観光から自律的観光へ
一九九〇年代以降に「他律的観光から自律的観光へ」の移行が顕著になる中で、旅行会社による送客に大きく依存してきた有名な温泉観光地の衰退が顕著になりました。その一方で、観光名所を持たない地域でも自律的に観光振興を図ることが可能になってきました。
国内旅行における旅行会社の利用率は年々減り続けています。
 2002(平成14)年には約36%でしたが、2006(平成18)年には約29%に落ち込んでいます。しかも、旅行会社の利用者のうち、約4割はJR券や航空券や宿泊クーポンのみの購入です。
 『レジャー白書』(2007年)によると、60歳代〜70歳代以上の高齢世代は「有名観光地回り・旅行会社任せ・お仕着せだが安いパック旅行」を志向する確率が77%で、他律的観光志向が顕著です。それに対して、40歳代以下の世代は旅行会社への依存志向が32%で、約7割は自律的観光を志向しています。
 自律的観光の時代を迎えて、観光産業は経営の革新に努め、競争力の強化を図る必要があります。一方、観光で未来を拓くチャンスが到来している各地域は「民産官学の協働」による自律的な観光振興体制の確立が不可欠になっています。

発地型から着地型へ
 社会経済生産性本部が2007(平成19)年に実施した「旅の価値観」に関する調査では、各人の関心やテーマにもとづく旅行への志向、体験志向、滞在志向などが高い比率になっています。自分で積極的に情報収集して旅行会社への依存度が低い「情報積極性」について、40歳代以下の世代は高い比率になっています。
 今後は従来の旅行会社が手配する「発地型旅行」ではなく、地域主導・地域密着による「着地型旅行」の推進が必要になります。大手旅行会社は各地域の観光資源を手間暇かけて旅行商品化することをコスト面から躊躇しがちです。そのために地元の観光魅力を熟知している観光関係者が主体となって創意工夫に満ちた旅行商品の創出が必要になります。
 2007年に旅行業法が改正され、従来は募集型企画旅行の実施が認められなかった小規模な第3種旅行業者でも一定の条件下で実施が可能になりました。法改正を受けて、各地で観光協会が合同会社などを設立して第3種旅行業の登録を行い、着地型の企画旅行の募集を行い始めています。