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発展を続けるアジア経済(2)
小樽商科大学 ビジネス創造センター 
  センター長・教授 海老名 誠



アジア通貨危機の勃発
 昔も今も、世界では大変な額のお金が飛び交っています。この不景気の中、どこにそんなお金があるかといえば、日本を含むすべての先進国には、将来の有事に備えた積立金が貯まっているのです。年金・生命保険・退職金の積立金などです。このような積立金は、将来の支払いに備え、低リスク・高利回りの運用先を探し求めています。
 香港が中国に返還された翌日(1997年7月2日)に、タイの通貨バーツの為替が変動相場制に移行し、アジア通貨危機が勃発したことを前号でお伝えしました。
 それまで米ドルとの交換比率は一定でしたが金利は米ドルの倍もあったのですから、世界中からタイに投資資金が集中したのです。しかし、米ドルとの交換比率が毎日の為替相場に連動すると発表された途端、タイから一斉に投資資金が逃げ出しました。世界の投資家は、タイバーツが弱くなると見て、他の安全な通貨を求めてタイから資金を引き上げたのです。

香港ドルも影響を受けた
 アジアの多くの国では、自国通貨と米ドルの交換比率を一定にしています。例えば、香港ドルもそうです。しかし、タイバーツと香港ドルには決定的な違いがあります。
 タイバーツの場合は、政府がそう決めただけで裏づけがあるかは分かりませんでした。一方香港ドルを印刷する場合には、実際に発券銀行の金庫に米ドル札を預けなければいけないのです。当時も今も、1米ドルを預けて7.8香港ドルを印刷しています。
 ですから、仮に何らかの理由で香港ドルが信用されなくなっても、一定のレートで銀行の金庫にある米ドルに交換してもらうことが保証されています。このように香港ドルは、理論的にアジアで通貨危機・通貨不安があってもアタックされることはないはずです。しかし、当時は香港ドルを米ドルに交換する動きが大量に出ました。
 私は当時都市銀行のエコノミストとして「香港ドルは安全だ」と多くの新聞や経済誌に書きましたが、アジアから大量の投資資金が逃げ出す動きは止まりませんでした。何故、安全な通貨も嫌われたのでしょうか?

風説の流布
 欧米の投資資金がアジア全域から逃げ出したのは、いわゆる「風説の流布」と言う現象です。
 香港の例に見るように、いくら安全だと叫んでも、一旦「アジアは危ない!」と投資家が考えると、各国の通貨システムの違いなど関係なく「アジアはすべて危ない」と拙速に判断し、資金を一斉に引き上げる現象が起きます。どこかの銀行が危ないという噂が出ると、一斉に預金者が銀行に殺到し、我先に預金を下ろそうとする取り付け騒ぎに似た現象が起こったのです。
 皆さんもご記憶と思いますが、1997年のアジア通貨危機はアジア全域を巻き込みましたが、タイ・韓国・インドネシアの3カ国が特に深刻でした。この3カ国は、自国の財政を支えることが出来なくなり、遂にIMFに助けを求めました。
 普通、国の財政が赤字になる場合には、国債と呼ばれる証文を発行して投資家に買ってもらい、帳尻を合わせます。日本の財政予算も、税収の落ち込みもあり赤字なので、毎年赤字国債と呼ばれる国債を発行しているのです。
 また最近、米国債の保有国として日本が中国を抜き最大になったと報じられました。米国も大変な赤字ですが、日本などが大量に引き受けてくれるので、国債を発行し続けることが出来るのです。
 しかし、タイ・韓国・インドネシアは自国の国債を発行しようとしても、引き受けてくれる買い手(投資家)がつかない程に、国の信用力が落ちたのです。そこで、止む無くIMFに助けを求め、IMFの厳しい指導の下、国の再生に取り組んだのです。それほどに財政の悪化に苦しんだアジアですが、2年後にはインドネシアを含むすべての国がアジア経済危機から立ち直ったのです。
(以下次号)