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観光学(24) 観光を読む

6次産業化と観光立国
北海道大学 観光学高等研究センター
センター長・教授 石森 秀三



農林漁業6次産業化
 昨年11月末の参議院本会議で、当時の仙石官房長官と馬淵国交大臣の問責決議が可決された。衆参両院のねじれ現象の故に生じた問責決議であった。ところが同じときに全会一致で可決された法案があった。それは「農林漁業6次産業化法案(通称)」であった。
 大新聞やテレビ各社は問責決議のことばかり報道しており、この重要な法案のことをほとんど報じていない。現在の日本では「空きカン政権」と揶揄されるように、中央政界の劣化が顕著だが、それ以上に日本のマスメディアの劣化こそが大問題だ。劣化が著しい「政官報」複合体が日本全体を弱体化させていることは明らかである。
 農林漁業6次産業化法案(通称)は正式には「地域資源を活用した農林漁業者等による新事業の創出等及び地域の農林水産物の利用促進に関する法律」という長い名称である。野党から提出されていた「地産地消法案」を取り込んで合体が図られたために、長い名称の法律になった。
 「6次産業化」というコンセプトは、農業や漁業などの第1次産業が加工(第2次産業)や流通・販売・サービス(第3次産業)などにも業務展開を図る経営形態を意味している。さらに従来は第3次産業とみなされてきた「観光」が第1次産業や第2次産業との有機的・総合的結合を図ることによって新しい価値や新しい事業を創出することも意味している。いわゆる「観光の6次産業化」である。

6次産業創出予算
「農林漁業6次産業化法」の成立に伴って、農林水産省はすでに「未来を切り拓く6次産業創出総合対策」のために約130億円を概算要求している。概算要求のポイントは「農林漁業者の6次産業化に向けた取組や地域資源を活用した新産業の創出を支援する基幹対策を、農林漁業者が加工・販売するための市場を拡大・活性化する市場拡大対策と併せて実施する」ことである。
 約130億円の予算というと、これだけで観光庁予算よりも多いことになる。農水省の一つの対策事業のための予算が日本の観光国家予算よりも多いとは何事か? 政府はすでに「観光立国」を提唱しているのだから、観光庁はもっと真剣に観光予算の増額と取り組むべきだ。農水省が農林漁業者のために「農林漁業6次産業化法」を成立させたように、観光庁は観光業者を元気にするための法律を提唱するとともに、観光予算の増額を図るべきである。
 日本の観光業界は全ての関係者が汗水をたらして日夜仕事に励み、法人税や所得税や固定資産税などを納めているにもかかわらず、何故これほどまでに不当な扱いを受けるのだろうか? 農林漁業者に対する手厚い公的資金の投入のあり方と比べると、観光業者に対する不当な扱いは顕著である。日本の未来にとって、農林漁業が重要であると同様に、観光業もまた重要である。
 いずれにしても、観光業界の関係者が誇りをもって仕事に励むことのできる政策の実施がない限り、観光立国の実現は不可能であろう。