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観光学(25) 観光を読む

東日本大震災と北海道観光
北海道大学 観光学高等研究センター
センター長・教授 石森 秀三


お土産店が並ぶ狸小路4丁目
お土産店が並ぶ狸小路4丁目

甚大なる震災被害
 千年に一度といわれる大震災が発生した。3月11日に三陸沖で起こった巨大地震は信じられないほどの大津波を生みだし、東北地域の太平洋側の各地を襲った。
 ニュース映像で見るかぎり、言葉を失うほどの大津波がリアス式海岸の各地に押し寄せ、甚大なる被害をもたらした。2万人を超える死者と行方不明者、25万人を超える避難者という痛ましい深刻な事態を生みだした。
 大地震と大津波はさらに東京電力福島第一原発で深刻な事故を引き起こした。その結果、放射能物質の放出・拡散と計画停電による広範囲にわたる混乱が各地で生じている。東日本各地は「大地震、大津波、原発事故」による被害という三重の苦しみを抱えている。
 そのうえに日本政府の無能・無策を見透かしたかのように、世界の投機マネーによる円急騰が生じた。3月17日には海外市場で1ドル=76円25銭に急騰し、1995年に記録した79円75銭の戦後最高値を16年ぶりに更新した。また大震災と原発事故と計画停電による不安感が高まる中で、東京市場の株価が急激に下落しており、景気悪化に拍車がかかっている。

北海道観光への影響
 世界的に観光産業は「フラジャイルな産業」とみなされがちである。フラジャイルとは「壊れやすい」「もろい」「虚弱な」などの意。「堅い」「丈夫な」「たくましい」を意味するタフの反対語だ。観光産業は外的要因の影響を容易に受けやすい「虚弱体質」を抱えてい る。現に大震災の被害を直接的に被っていない北海道で大きな影響が生じている。3月1日から大震災発生まで、新千歳空港での外国人入国者数は一日平均で約850人であったが、3月12日以降は約240人に激減しており、7割減が生じている。函館空港では復興航空(台湾)が4月末までに運航予定だった全27便をすでにキャンセルしている。大韓航空の函館―ソウル便の搭乗率も大震災発生後は20%以下に落ち込んでいる。
 札幌の観光業界は3月23日に震災対策会議を開催したが、宿泊関係者は予約の3〜4割のキャンセルを報告し、外国人旅行者の多い札幌狸小路商店街振興組合は「外国人客はほぼゼロで、全体の売り上げが3〜4割減」と報告している。
 米国政府は日本への渡航延期を勧告しており、各国政府も追随している。そのため日本へのインバウンドは激減する可能性が高い。国内的にも観光は「不要不急」扱いを受けるので、北海道観光の停滞は避けられない。むしろ、この間に将来を見据えて、観光が内包する虚弱体質の根本的改善を図り、地域住民が主体となって推進する新しいかたちの観光振興のあり方を模索すべきだ。

狸小路5丁目
狸小路5丁目