小樽の皆さま、小樽出身の皆さま、小樽ファンの皆さまへ! 自立した小樽を作るための地域内連携情報誌 毎月10日発行
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地域経済(18) 経済を読む

町を元気にするのは貴方の本気
小樽商科大学
ビジネス創造センター
センター長・教授 海老名 誠



 これまで17回に亘り小樽や北海道の活性化について述べて来たが、今回が最終回である。私は3月末に小樽商大を定年退職した。小樽商大は母校であり、北海道は故郷である。卒業後、世界中で駐在員として暮らしたが、この間、一時も故郷を忘れたことはなかった。34年ぶりに戻った故郷は、昔より豊かに見えた。大学の校舎も建て替えられ、立派になっていた。しかし、私は奇妙な違和感を覚えた。それは、北海道の人から「大志」が失われたのかということだった。昔の北海道は経済的には貧しかったのだが、人々の心には気概があった。北大のクラーク先生は離任に際し“Boys be Ambitious"(青年よ大志を抱け)と言ったそうだが、今の若者に大志はあるのか?
 長年アジア経済を見てきて思うことは、結局人間は「豊かになるために働く」のであり、その根底には「ハングリー精神」があるということだ。アジアのほぼ全ての国が近年高い経済成長を遂げているのも、日本のような豊かな国を目指して、皆が全力で頑張っているからだ。日本は、高度成長期の後1990年にバブル経済が崩壊して以来全く経済成長していない。ついに昨年は中国がGDPで日本を追い越した。中国は様々な問題を抱えた国だが、日本よりずっと沢山の金持ちが生まれている。日本では、最早餓死者を出すことはない。しかし、今日本の若者は就職難に直面し、働き盛りの中年は子供の教育費や住宅ローンの返済で余裕がない、そして多くの高齢者は老後に不安を持っている。この国が、真に豊かな国と言えるのだろうか。
 私は1972年に銀行の駐在員としてニューヨークに暮らし始めた。その時に、今故郷に戻って感じている違和感と似た気持ちを持った。米国では日本の様に皆が一生懸命に働いている訳ではないと思った。ニューヨークに7年住んで、米国のからくりが分かった。米国経済は5%の「猛烈に働く高給取り」と95%の「安定を求める低所得者」で成り立っているのだ。1970年代は日本が高度成長を続けた時代だった。米国の友人は、日本人はFair(公平)じゃないと言った。なぜなら、日本人が家庭を犠牲にして真夜中まで働き、夏季休暇も満足に取らずに働くのなら、競争に勝つことは当たり前だと言った。確かに私はあの9・11で崩壊した世界貿易センタービルの80階で4年ほど勤務したが、その日の内に仕事を終えてビルを出た記憶はあまりない。これは極端な例なのかも知れないが、今の中国や韓国の熱気とパワーを見ていると、当時の米国と日本の関係が逆の立場で起こっていると感じる。そして悲しいことに、今の日本では庶民が当時の米国ほどの豊かさを享受できない。
 それでは小樽をもっと豊かにするにはどうすれば良いのだ。私は「アジアと共に生きて行く」ことだと思っている。少子高齢化が進む地域で、自分たちだけで経済発展を目指しても無理がある。アジアを助け、アジアに助けて貰うのだ。そして町を元気にするのは、貴方が本気になるしかないのだ。