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まちづくり学(2)

コンパクトシティ(2)
小樽商科大学 商学部
社会情報学科 准教授
ビジネス創造センターフェロー 大津  晶


 前回予告したとおり、今号から何回かに分けて近年日本のまちづくりの目標として定着した感のある「コンパクトシティ」について、そのルーツ、理念から具体的な政策のあらましを解説してみたいと思う。

コンパクトシティの概念
 我が国では、急速な人口減少や資源環境問題などを背景に、多数の自治体が効率的な都市構造や行政サービスへの転換を目指して、自らの都市の将来像として「コンパクトな市街地の形成」を謳うようになっている。ここでいう「コンパクトシティ」とは、環境負荷の低減やエネルギー効率に優れた社会システムの概念であると同時に、低成長時代の持続型成熟社会の構築へ向けた具体的・現実的な政策体系であるともいえ、都市計画研究の分野では、概念やモデルとしてのコンパクトシティだけではなく、より実証的な分析や具体的な政策アプローチも盛んに研究されている。

コンパクトシティの源流
 これほど一般的になった「コンパクトシティ」だが、そのルーツについては意外に広く知られていない。コンパクトシティという言葉は、1974年に刊行された「『コンパクト・シティ』、G.B.ダンツィク・T.L.サアティ著、奥平耕造・野口悠紀雄訳」ではじめて紹介された。原著者のダンツィクとサアティの名前には馴染みがないかもしれないが、ダンツィクは線形計画の解法である単体法の発見者として、サアティは意思決定分析の定番である階層分析法(AHP)の提唱者として、いずれもオペレーションズ・リサーチの分野のとても著名な研究者で、この本の中ではじめて示されたコンパクトシティの原型は、著者らが数理最適化理論の研究者であったことと実は密接な関係がある。

コンパクトシティの原型
 ダンツィクとサアティが考案した“元祖コンパクトシティ"は、私たちのイメージとは相当にかけ離れた(ある意味ではマニアックと表現しても良いほど)極めて理想主義的な都市環境システムである。「〜豊かな生活空間四次元都市の青写真〜」を副題とするこの著書の中で提案された最適都市の基本形態は<直径2.5〜5キロメートルあまりの真円型で高さ72〜150メートルの巨大建築構造物>で、まるで“パイ皿"を逆さに伏せたようなかたちに描かれている。その内部は8〜16層の人工地盤になっており、都市機能の概要は以下のように表現されている。
市街地:
 最も中心部に緊急施設を配置し、それを囲むように学校などの公共施設を立地させる。
人 口:
 公共施設の外側に居住地域を配置し効率的な密度で生活する。都市全体として25万人から最大200万人を収容する。
交 通:
人の移動は物資と廃棄物の輸送システムと同時に設計されており、水平移動は完全な放射環状の公共交通システムと歩道(自家用車の利用は想定されていない)、垂直方向には均一に配置され    た256台のエレベータを利用する。
農地・工場:
この都市システムのすぐ外側に農地、さらにその外側に工場を配置する。
…などなど、原著ではさらに細部にわたる“仕様"が大まじめに検討されている(残念ながら現在は絶版)。大半の方はまるでSFのようだと違和感をお感じになるかもしれないが、「コンパクトシティ」が一般化した反面で単に「市街地の集約」程度にしか理解されていないとすれば、2人の研究者による理想の都市モデルを再検証することで、有益な示唆を得ることが出来ると思う。

<参考文献>
G.B.ダンツィク・T.L.サアティ著、奥平耕造・野口悠紀雄訳(1974)「コンパクト・シティ〜豊かな生活空間四次元都市の青写真」、日科技連出版社
玉川英則編著(2008)「コンパクトシティ再考〜理論的検証から都市像の探求へ」学芸出版社