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観光学(32) 観光を読む

縄文文化が地域を拓く
北海道大学 観光学高等研究センター
センター長・教授 石森 秀三



北海道の縄文文化
 東日本大震災をきっかけにして、日本人の生き方に変化が生じつつある。過剰なまでの物質依存文明やエネルギー依存文明を脱して、より自然に寄りそう生き方を考える日本人が増えつつある。グローバルな視野でみても、すでに「低炭素化社会の実現」が世界的課題になっており、さまざまな動きが起こっている。
 そのような今日的課題の実現を図るさいに、一万年以上の長期間にわたって、自然と人間が安定的に共生してきた「北の縄文文化」から現代人が学ぶべきことが数多くある。日本列島では一万五千年位前に縄文時代が始まったといわれている。その後、三千年位前に水稲耕作を伴う弥生文化が北部九州で始まり、農耕革命によって過剰な富が生産され、富の収奪と人間の差別化(支配と被支配)が生じた。
 その一方で北海道では一万四千年位前に縄文時代が始まり、二千三百年位前まで縄文時代が継続し、続縄文時代(縄文文化の特色を継続)が一千三百年位前まで継続していたといわれている。つまり日本列島の中で、北海道において最も長く縄文文化が継続されたわけだ。

縄文文化交流センター
 縄文文化は日本の基層文化とみなされており、基本的には森の文明であり、漁撈採集文化を育んできた。縄文人は基本的に農耕を行わずに定住生活を維持し、自然との共生を大切にして、生命の永遠の循環や生きとし生けるものはすべて平等(人間だけが特別な存在ではない)と考えて、豊かな精神世界を育むとともに安定した持続・継続型社会を営んできた。
 北海道初の国宝「中空土偶」を常設展示し、道の駅機能も併せもつ博物館(函館市縄文文化交流センター)が今年十月一日に函館市臼尻町(旧南茅部町)でオープンした。開館二週間で早くも一万人の入館者を迎えるほどに好評を博している。展示室では、厳しい自然環境の変化に適応しながら成熟・繁栄した縄文文化の諸相が取り上げられており、土器や石器や骨角器などの多種多様な道具類、竪穴住居や貯蔵穴などをとおして縄文人のくらしのあり方が展示されるとともに、自然とともに生きていく中で形成された精神性について足形付土版や土偶などの遺物から循環と再生を信じた縄文人の心を感じ取ることができる。また北海道初の国宝に指定された「中空土偶(茅空)」が常設展示されている。
 縄文文化交流センターでは体験メニューも数多く用意されている。縄文編み、ミニチュア土器づくり、縄文ペンダントづくり、拓本とり、組みひもアクセサリーなど多様なメニューで縄文体験が楽しめる。さらに、縄文文化交流センターは道の駅「縄文ロマン南かやべ」に隣接しており、北海道における縄文文化発信拠点としての役割とともに、函館観光の新しい魅力の一つとしての役割が期待されている。