小樽の皆さま、小樽出身の皆さま、小樽ファンの皆さまへ! 自立した小樽を作るための地域内連携情報誌 毎月10日発行
bg_top
alwHOMEalw読んでみるalwまちづくり運動から学ぶ(14)

まちづくり運動から学ぶ(14)

全国的波紋
石井 伸和


『小樽運河保存の運動』小樽運河保存の運動刊行会
『小樽運河保存の運動』小樽運河保存の運動刊行会

考える会・愛する会
 昭和53年6月24日、道内の学者・文化人10人を中心に札幌で「小樽運河問題を考える会」を結成し、小樽市へ要望書を提出、「小樽運河問題を考える会ニュース」発行。9月には「小樽運河問題を考える旭川の会」発足、10月には「小樽運河を愛する会」(東京)が発足し、同月「守る会」「考える会」「愛する会」の3団体で文化庁・環境庁・建設省に運河保存を陳情している。小樽ではポートが開花し、守る会では峯山氏の八面六臂さながらの遠心力行脚によって全国に運河問題が波及していく年である。

「小樽運河問題」を考える会発起人
 田上 義也(建築家・北海道国際文化協会会長・札幌市)
 更科 源蔵(詩人・北海道文学館理事長・札幌市)
 九島勝太郎(北海道文化財保護委員・札幌市)
 高倉新一郎(北海学園大学学長・札幌市)
 原田 康子(作家・札幌市)
 三浦 綾子(作家・旭川市)
 松尾 正路(前小樽商大教授・札幌市)
 河邨文一郎(詩人・札幌医大病院長・札幌市)
 沢田 誠一(作家・北方文芸代表・札幌市)
 小柳  透(詩人・札幌市)
 水口 幾代(歌人・札幌市)
 神谷 忠孝(北大助教授・日本文学・札幌市)
 佐野 法幸(北海道労働金庫理事長・札幌市)
 岡田 義雄(前道議会副議長・札幌市)
 川村  琢(北海学園大教授・経済学・札幌市)
 浪花  剛(なにわ書房社長・札幌市)
 入江 好之(詩人・北書房社長・札幌市)
 国府谷盛明(日本科学者会議会員・地質学・札幌市)
 石田 輝夫(日本科学者会議会員・水産増殖学・札幌市)
 矢島  武(札幌商大教授・経済学・札幌市)
 菱川 善夫(北海学園大学教授・日本文学・札幌市)
 国松  登(画家・札幌市)
 伊藤  仁(画家・札幌市)
 本田 明二(彫刻家・札幌市)
 横道 英雄(北大名誉教授・工学・札幌市)
 神山 桂一(北大教授・衛生工学・札幌市)
 高野斗志美(旭川大教授・文芸評論家・旭川市)
 木内  綾(民芸織物家・旭川市)
 米坂ヒデノリ(釧路女子短大教授・彫刻家・釧路市)
 鳥居 省三(釧路図書館長・釧路市)
 佐々木逸郎(劇作家・札幌市)
 林  白言(北見文化連名会長・北見市)
 山川  力(北海道新聞社顧問・札幌市)
 十亀 昭雄(北海道教育大教授・教育学・札幌市)
 新妻  博(詩人・北海道詩人協会会長・札幌市)
 鵜川 章子(詩人・亀田郡大野町)
 長見 義三(作家・千歳市文化財専門委員・千歳市)
 国松明日香(画家・札幌市)
 本間 慶蔵(コンチネンタル貿易社長・札幌市)
 須見 容子(文芸評論家・札幌市)
 山内 栄治(北海道労働文化協会理事長・札幌市)
 小笠原 克(藤女子大学教授・日本文学・札幌市)

「小樽運河を愛する会」役員
 顧 問 石川 忠臣(朝日新聞社記者)
 顧 問 稲垣 栄三(東京大学教授)
 顧 問 緒方 昭義(横浜国立大学講師)
 顧 問 村松貞次郎(東京大学教授)
 会 長 夏堀 正元(作家)
 副会長 田村 清美(会社役員)
 副会長 風間 龍(関東学院大学教授)
 理 事 井手 孫六(作家)
 理 事 大木 英子(作曲家)
 理 事 大原 一成(建築家)
 理 事 おおば比呂司(文筆業)
 理 事 片桐 裕明(建築家)
 理 事 金丸 直衛(画家)
 理 事 工藤父母道(日本自然保護協会)
 会計監査 岩田 秀行(会社相談役)
 事務局長 菅井  茂(建築家)
<『小樽運河保存の運動 歴史編』>

手づくりの第1回「小樽運河研究講座全10回記録」
手づくりの第1回「小樽運河研究講座全10回記録」
第1回小樽運河研究講座
 昭和53年の最後を飾るのは、5団体で実行委員会を結成し、小樽市労働会館において昭和53年末から翌年2月まで開催された「小樽運河研究講座」である。昭和53年12月11日〜昭和54年2月20日

主催5団体
 小樽運河を守る会、小樽夢の街づくり実行委員会、小樽運河を考える会、小樽運河を愛する会、北海道の環境を考える会

 この講座でのエキスを以下に抜粋する。
「文化っていうのは生きてなくちゃいけない」 倉本  聰
「人間が息づいていない風景は残してはいけない」 守分 寿男
「扇の要である海と人々がつながって生きてきた」 山口  保
「美には利害関係があってはならないが、商業ベースから考える美もある」 倉本  聰
「現代の都市計画は空間における公私のけじめを明確に分け過ぎてきて共有という概念が欠けている」 重村  力
「共有とはたとえば住宅でいうと機能のほかに団らんをいう」 重村  力
「シューマッハは美と健康と永続性が人間の目的で 経済学はこれに奉仕しなけらばいけないという」 重村  力

第1回 12月11日
 「小樽の町の魅力」
 講師:倉本  聰(脚本家)
    守分 寿男(HBCディレクター)
    森本 光子(画家)
 司会:越野 武(北海道大学助教授)
第2回 12月19日
 「歴史的町並みの保存と再生」
 講師:足達富士夫(北海道大学教授)
    角  幸博(北海道大学助手)
    倉元たつひこ(建築家)
    下村 憲一(建築家)
第3回 12月22日
 「小樽運河の形成とその背景」
 講師:遠藤 明久(北海道工業大学教授)
    森山軍治郎(専修短大助教授)
第4回 1月8日
 「地域自立の街づくり
  〜沖縄のまちづくりをとおして〜」
 講師:重村  力(神戸大学講師)
第5回 1月10日
 「地域での試み」
 講師:小崎  隆(映画作家)
    神南 天翔(舞踊家)
    国松明日香(彫刻家)
    佐々木興次郎(喫茶店主)
    中島  洋(映画作家)
    前田 重和(音楽コーディネーター)
 司会:佐々木恒治(詩人)
第6回 1月16日
 「小樽の文学風土」
 講師:小笠原 克(藤女子大教授)
    小檜山 博(作家)
    末武 綾子(作家)
第7回 1月23日
 「環境保全〜都市と水〜」
 講師:神山 桂一(北海道大学教授)
    小林 三樹(北海道大学助教授)
第8回 2月6日
 「小樽への提言」
 講師:石塚 雅明(日本ナショナルトラスト調査研究員)
    柳田 良造(日本ナショナルトラスト調査研究員)
    森下  満(日本ナショナルトラスト調査研究員)
第9回 2月16日
 「続・地域自立の街づくり」
 講師:大石 和也(池田町企画部長)
    平田 淳司(士幌町農協信用部長)
 司会:小林 英嗣 (北海道大学助手・THE SEA委員)
第10回 2月20日
 「小樽運河研究講座総括討論会」

学びながら運動
 峯山冨美氏はその著『地域に生きる』においても強調されているように「学びながら運動する」方法を大事にされてきた。この昭和53年は、峯山氏が小樽運河を守る会の会長となった年だが、彼女は若い頃の大正後期に真狩から小樽に移転して見た運河の活気を、小樽の原風景とする情緒的な動機から運動に参加されていた。しかし運動を成就するためには、多くの人々の賛同を必要とする実感を持ち、より多くの人々の幸せに結びつける運動でなくてはならないと確信した。特に経済や文化、そして歴史や建築、都市計画など多方面の学びの必要性を実感したことを聞く機会に私は恵まれた。
 のちに東京大学工学院系都市工学科教授・西村幸夫氏は「小樽の運河保存運動は次々に書き下ろされていく教科書」と評したが、守る会もポートも夢街も全て過去に見本のない運動であったし、その新しさ故に何よりも学びを必要とした。逆に言えば、学ばなければ新しさを紡げない宿命ともいえる。
 イベントの準備や実践の中でも多くの学びがあるが、この小樽運河研究講座はまさに5団体がそれぞれ運動を戦略的に展開していくにあたって、必要と思われる内容をテーマとして相応しい専門家の話を聞く体系だった。

ダイナミズム
 この昭和53年の運河に関する様々な出来事の渦中にあって、山さん(山口 保)は言う。
「石井、これが社会のダイナミズムってやつや。ここが肝心なんや。個人的に有名人が記者発表したとか、投稿したとか、そんなレベルとちがうんや。然るべき人々が然るべき社会的組織をつくって然るべき行動を起こしとんのや。わかるやろ、学者や建築家や作家の有名な文化人達が名を連ねとんねん。そして国に向かって誠意ある対応を促しとる。当然、国かて動かざるを得なくなってるやろ。この引き金を引いたのは峯山さんや。ただのオバチャンとちゃうで。情熱で日本中に訴えてきたリアクションなんや。だから僕らがやったポートも評価されるし、逆に峯山さんの情熱行脚を支えていることにもなるんや。つまりボタンの押しどころの問題やねん。守る会が市長相手になんぼゆーたかて相手にされへん。だから峯山さんは全国に訴えた。アウエイ戦略に切り替えたんや。地元のボタンではなく全国のボタンを押したことになるんや。せやからこんな大きな波紋になっとんねん。全国がこんなに騒いでる小樽の運河って、そんなに大事なもんかって、今度は小樽市民がただの汚い運河を見直すという遠隔操作的な働きを持ってきたんや。僕らのポートかておんなじやで。署名や陳情で行政を、いわゆる当局をやな、相手にしていては埒があかんと思ったから市民を身方につけようと考えた。市民を身方につけるには明るい祭りがええとなって、これを実践したら市民の半分が運河に足を運んでくれたんや。峯山さんが押したボタンで全国に火がつき、僕らが押したボタンで市民に火がついたってことになるやろ。えらいこっちゃで。正直ゆーて、僕かてここまでなるなんて想像もしてなかったし、多分、峯山さんかてハナっからそんな戦略持ってへんと思うでぇ。手探りの中で真摯に訴える姿勢が世論を動かした結果と思うでぇ。言ってみりゃよぉ、社会のダイナミズムが動き出す条件にはよ、現場であがくほどの手探りの情熱と、経験や知識や洞察で頭で描く戦略の二つがあるかもしれんな。でもよ、戦略がなくても情熱があれば、その情熱に刺激された人々の動きが、結果的に戦略になっていく場合の方が歴史上多いのかもしれんなぁ。その原動力は多分、峯山さんの敬虔なクリスチャン精神から来ているのかもな。僕らの仲間にも戦略を考えられる奴おるんでぇ。わかるか。小川原や。ほんで情熱を惜しげもなく発信できるのが興次郎や。そこでや、峯山さんが巻き起こしてくれた全国の波紋の広がりに対して、責任持った受け皿にならんといかんのが僕ら小樽の市民やで。なぜなら小樽が問題の当局だからや。運河は東京や大阪にあるんじゃなくて小樽にあるからや。もっとヨケイに身方になってくれる市民をつけることや、運河問題が秘めている大事な社会的テーマをどんどん浮き彫りにしていく学びが必要なんや。だから学びながら運動するってこと、しっかり覚えておこうや」
 驚いた。当時の私にとって、なんという明快でわかりやすい説明であっただろう。ダイナミズムの意味、その絡繰り、ボタンの押し方とチャンネル、情熱と戦略、運動の蓄積と開花、そして私らが今後すべき道にまでその諭しには込められていた。この山さんの説明は、一言漏らさず私の心に染み込んだ。そして今、自分がどこにいてなにをすべきかの枠組みが明確になった。あとはその枠組みで自分自身がなにをすべきかを引き出せばいい。


第8回ポートのチラシ
第8回ポートのチラシ

第1回ポートのチラシ
第1回ポートのチラシ