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観光学(41) 観光を読む

カウチサーフィンと若者の旅行
北海道大学 観光学高等研究センター
センター長・教授 石森 秀三



カウチポテト
 1970年〜80年代に「カウチポテト(Couch Potatoes)」という言葉が流行ったことがあった。カウチ(ソファー)に寝そべったまま動かずに、主にテレビを見ながらだらだらと時間を過ごす人のことを意味していた。「カウチポテト族」などとも表現された。
 怠惰で運動不足の上に、ジャンクフードばかりを食べて肥満になり、不健康な生活状態にあることが揶揄された面もあり、現代文明が内包する病的な側面が象徴されていた。

カウチサーフィン
 時代が変わって、日本ではまだ十分に知られていないが、いま世界的に「カウチサーフィン(Couch Surfing)」が有名になっている。もちろん、カウチ(ソファー)を用いて行う、新しいサーフィンが意味されているわけではない。「カウチサーフィン」は、世界で最も大規模なホスピタリティ・エクスチェンジ・ネットワークの名称だ。要するに旅行者が無料宿泊先を斡旋してもらうための非営利ネットワークのことである。
 カウチサーフィンの創始者は米国人のケーシー・フェントン(Casey Fenton)氏である。1999年にボストンでコンピュータ科学を学んでいた大学生の時にアイスランドを旅行することになり、訪問前にホームスティ希望のメールを配信したところ、約50人の現地の大学生から受け入れ受諾の返信を受け取り、アイスランドでホームスティを楽しんでから米国に帰国する機中でホスピタリティ・エクスチェンジ・ネットワークの立ち上げを決意したらしい。
 オンラインシステムの専門家の協力を得て、2004年に公式に非営利法人として「カウチサーフィン」を立ち上げ、ネットワークを構築した。現在では全世界で207カ国、9万都市に約450万人の会員を有する巨大ネットワークに成長している。会員数の多い国を列挙すると、最も多い順に、米国、ドイツ、フランス、カナダ、英国、オーストラリア、イタリア、ブラジル、スペインなど。日本人の会員は1,300人程度で非常に少ない。

若者の旅行が変わる
 カウチサーフィン利用者を年代別に見てみると、18歳〜29歳が7割近くを占めており、利用者の平均年齢は28歳である。性別では、男性が53%、女性が47%でほぼ同程度となっている。
 カウチサーフィンは若者の国際交流に大きく貢献しているが、一方で女性がホームスティ先でレイプされる事件が起きたりしており、安全対策のための制度改良が必要になっている。具体的には、ホームスティ提供者に関するレファレンス機能(宿泊者による情報提供・評価)の強化などが行われている。
 欧米ではすでにLCC(格安航空)が航空旅客の約3割を運んでいるが、近年アジアでもLCCが隆盛化している。今年は日本における「LCC元年」と言われており、日本でもようやくLCCが重要な役割を果たすようになっている。日本ではまだカウチサーフィンが隆盛化していないが、今後日本においてもLCCの隆盛化と相まって、カウチサーファーが増加していくことによって、若者の旅行のあり方は大きな影響を受けることになる。若い間に世界を広く旅をして、いろいろな人々と交わり、見聞を広めることは日本の未来にとってもプラスになる。