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観光学(46) 観光を読む

欧州連合に学ぶ東アジアの地域連携
北海道大学 観光学高等研究センター
センター長・教授 石森 秀三



日中・日韓関係の緊張
 尖閣諸島の国有化をきっかけにした日中関係の緊迫化や竹島の領有をめぐる日韓関係のこじれなどによって、中国や韓国からの訪日客が激減している。昨年は日本における「LCC(格安航空)元年」といわれ、中国や韓国とのLCC路線の開設によって順調にインバウンドが増加していただけに残念な状態が続いている。
 昨年は中国と韓国で共に、新しい指導者(総書記や大統領)の選出が行われたために日本との外交関係の正常化がスムーズに行われなかった。されど、中国では習近平総書記が選出されるとともに、韓国ではパク・クネ次期大統領が選挙で選ばれたので、今年は新しい指導体制の下で日中・日韓関係の正常化が期待されている。
 日本と中国と韓国はこれまで2年毎に観光担当大臣会議を開催して、観光交流の促進を図ってきた。2011年に韓国で3カ国の観光担当大臣が出席をして会議が開催され、通常であれば、2013年に開催する次回の会議を1年早めて昨年11月に福島県で日中韓観光担当大臣会議を開催することで合意していたが、残念ながら開催されなかった。震災復興に弾みをつけることが意図されていたが、政治的緊張の故に延期になった。

ノーベル平和賞
 昨年のノーベル平和賞は欧州連合(EU)に授与された。EUは前身の時代から60年以上にわたって、欧州における平和と和解、民主主義と人権の促進に貢献し、欧州を「戦争の大陸」から「平和の大陸」に変革させる役割を果たしたことが評価された。歴史的に敵対してきた独仏両国の相互信頼関係の構築、南欧・中東欧における民主化の実現、火薬庫と呼ばれたバルカン半島における和平の実現などが重要である。
 第二次大戦後の欧州では1952年に仏や西独など6カ国が参加して、欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)が設立され、資源の共同管理による地域連携が図られた。その後のさまざまな地域連携の積み重ねがEUの結成を可能にした。1952年のECSC設立から60年の歳月を経て、ノーベル平和賞の受賞に至ったのであり、まさに「EUは一日にして為らず」である。

日中韓観光担当大臣会議
 翻って、東アジアに目を向けると、太平洋戦争が終結してから67年経つのにいまだに日中・日韓関係がぎくしゃくしており、実に残念だ。もちろん戦争が生みだした様々な傷が簡単に癒えないことは事実であるが、日中韓における経済交流、文化交流、人的交流は緊密化しており、相互依存の度合は飛躍的に高まっている。
 欧州の事例でも明らかなように、地域連携や地域統合は容易ではない。されど欧州が60年前に石炭や鉄鋼の共同管理から地域連携に着手したのと同様に、日中韓の3カ国も特定の共通課題(観光)による地域連携に着手することが望ましい。
 今年日本で開催される日中韓観光担当大臣会議において、ぜひとも「東アジア観光共同体」を提唱して一歩一歩着実に日中・日韓関係の改善のための歩を進めてもらいたい。観光は「平和へのパスポート」であり、地域連携に最も相応しい共通課題である。併せて、2014年を「日本観光年(Visit Year of Japan)」に指定して、日本へのインバウンドの増加を図ることによって、日本の各地域における観光活性化の後押しをすべきである。