雪の小樽駅
シンメトリー
昭和9年12月25日のクリスマスに竣工したこの小樽駅舎は、シンメトリー(左右対称)の安定したデザインで、小樽人にとってランドマークベスト3にも入る小樽を象徴する歴史的建造物である。昭和5年に竣工した上野駅に似ていると評判になったらしい。
雪の小樽駅
夏は長閑な景色にさえ見える小樽駅は、本誌36号帰化人の黒松氏が「小樽駅ほど雪が似合う建物はない」といい、昭和42年に誕生した歌謡曲「小樽のひとよ」の一節にも「粉雪舞い散る小樽の駅」と歌われるように、雪との相性が合う。
そう感じるには、建物の安定感、小樽の文化性、小樽の情の深さなどが、寒さに耐えうるバックボーンとしてあり、厳しい自然に向き合うひたむきさを讃える気持ちが込められている。
ファンタジー
雪の小樽駅こそ、小樽へ訪れる観光客の動機となっているファンタジーの代表的景観といえる。ファンタジーの意味は幻想だが、小樽人にとっては気配であってほしい。時代が変わり、産業が衰退し、人口が減り、若者が流出している今日、「なんとかしなければ」と志が疼かないか。小樽駅は小樽の中で人の出入りが最も多い施設であることに変わりはない。この威厳が、「これでいいのか」と警鐘を鳴らす最後の切り札に映ってくる。そんなことを小樽駅が語る気配を、舞い散る雪が映し出してくれる。