小樽の皆さま、小樽出身の皆さま、小樽ファンの皆さまへ! 自立した小樽を作るための地域内連携情報誌 毎月10日発行
bg_top
alwHOMEalw読んでみるalw観光学(48) 観光を読む

観光学(48) 観光を読む

東南アジア諸国への期待
北海道大学 観光学高等研究センター
センター長・教授 石森 秀三



ネクスト・チャイナ
 日本による尖閣諸島国有化に端を発して、中国は軍事覇権的な対日攻勢を強めている。中国軍艦によるレーザー照射事件をめぐる論争が日中関係をさらに悪化させており、そのために多数の中国人観光客の来日が期待された春節も期待外れに終わった。中国人観光客誘致に力を注いできた地域は当てが外れて苦戦を強いられている。
 そのうえに先日発表された中国の昨年の実質成長率は8・7%にとどまり、8%を割るのは1999年以来のことである。今後の中国は成長率10%以上の高度成長期が終わると予測されるために、日本企業は海外戦略を大幅に見直す必要にせまられている。中国に依存した海外戦略を切り換えて、「ネクスト・チャイナ」を模索する動きが活発化し始めている。

東南アジア諸国と北海道
 中国人観光客が激減する一方で、東南アジア諸国からの観光客は大幅に増加しており、東南アジア諸国向けのプロモーションに力を入れてきた地域は活況を呈し始めている。たとえば北海道の場合には、昨年10月末にタイ国際航空がバンコク―新千歳線に新規就航によってタイ人観光客が急増している。
 今年2月に開催された「さっぽろ雪まつり」でも、タイ政府観光庁の総裁が来札して開会式典に参加し、タイと日本の観光交流の拡大に力を入れることが表明された。タイ国際航空は当初今年3月末までの冬季限定の運航を想定していたが、予約状況が順調であり、北海道が観光デスティネーションとして魅力的であるために通年運航を決定している。
 北海道ではすでにニセコ町でマレーシアの最大のコングロマリットの一つであるYTLコーポレーションが大きなリゾート開発事業に着手している。YTLは、電力、水道、鉄道、建設、セメント、不動産、ホテル経営、リゾート経営などを幅広く事業展開しており、とくに英国における上下水道事業は順調に発展している。東京証券取引所でも一部上場を果たしている。このリゾートが本格的に稼働すると、東南アジア諸国の富裕層が来道することは確実だ。YTLは華僑系の財閥であり、東南アジアの富裕層を引き寄せるネットワークを有している。

ASEANと日本
 そういう状況の中で「ネクスト・チャイナ」としてASEAN(東南アジア諸国連合)が注目されている。ASEANは1967年にインドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイの5カ国で結成され、その後にブルネイ、カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナムを加えて、合計10カ国で地域連携を深めている。
 今年は日本とASEAN諸国との本格的な交流がスタートして40周年の記念すべき年である。1973年に「日本ASEAN合成ゴムフォーラム」が結成され、今年が40周年になるために双方で各種の記念事業が行われる。
 日本とASEAN諸国との貿易総額はすでに20兆円に達しており、しかも日本企業の主要な直接投資先になっている。ASEANは日本にとっての「ネクスト・チャイナ」としての存在感をとみに高めており、観光交流の面でも一層の拡大が期待されている。とくに北海道はASEANとの関係が親密化しており、今後の交流拡大に期待が高まっている。