小樽の皆さま、小樽出身の皆さま、小樽ファンの皆さまへ! 自立した小樽を作るための地域内連携情報誌 毎月10日発行
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帰化人(44) 小樽こだわりのライフスタイル

人と人の絆
武田 賢一 氏

たけの寿司 店主
〒047-0027 小樽市堺町2-22
TEL 0134-25-1505
E-mail takeno_sushi@yahoo.co.jp
http://www.takenosushi.com



帰化経緯
 武田氏は1968(昭和43)年4月26日に大阪で生まれる。千葉県の高校を卒業後、東京神田の設計事務所に入社。工業系の学びは素人だったが、必死に学びプラント設計として5年間勤務。この東京時代に小樽の巽鮨(26号地域資源活用ビジネス参照)の親方・佐藤好美氏が小樽から千葉の駅ビルに物産展で出張されていた。ここで武田氏と佐藤氏に縁が生まれ、物産展のたびに佐藤氏にご馳走になり、「小樽へ来ないか」という佳き縁に結ばれた。平成4年、東京をあとに来樽、即巽鮨入社。

小樽印象の変遷
 大阪生まれ東京育ちの武田氏の小樽への第一印象は「とんでもない田舎」だった。まして積雪には往生する。そこで彼を唯一惹きつけたのが「人と人のつながり」だった。居住先を見つけた際にも「洗濯機や冷蔵庫やテレビまで差し入れてくれたのです。都会では隣に誰が住んでいるかも無関心な境遇が当たり前と思っていましたが、この人の良さに驚きました。この関係が小樽に腰を据える最大のきっかけになりました」と語る。
「差し入ればかりでなく、親方に頼んで地元客を増やすことを目的に、いくつかの会に参加させていただき、そこでも人と人の絆を大切にする仲間に出会い、僕の小樽への確信はますます強くなってきました」

役員
 平成4年に寿司職人を目指して巽の親方に師事するが、これまた素人でしかも不器用。しかしこれしかないと決断し修行に励む日々が続く。平成12年に親方から「専務として頑張ってほしい」と励まされ、新規出店の堺町店店長として心機一転。しかし人通りは本店の寿司屋通りよりはるかに多いにもかかわらず、観光客はなかなか入店せず悩む。1ヶ月後、もう店をたたむしかないというため息を吐くときに玄関に目が行った。「ここには大勢の人が歩いている。小樽への観光客がほとんどだ。なら間違いなく昼か夜には小樽名物の寿司をどこかで食べる確率は高い。ということは入りやすい玄関の工夫をしてみよう」という葛藤の中でこのアイディアが功を奏し、少しずつ入店客が増えるようになる。
 そして決定的だったのはテレビ番組で取材されたことだった。記録的だったのは1ヶ月で1,800万円を売り上げるほどの急成長を果たすのだ。

独立
 2013(平成25)年3月15日、独立して「たけの寿司」を開店。
「巽時代に親方にお願いして様々な小樽の会に参加させてもらったことは、僕自身のビジネスの仕方を見つけ出す大きなチャンスになっていました。基本は堺町という観光市場ですが、夜にきていただくためには地元客の来店をなんとか実現したいと考えていました。しかしこれ以上親方に迷惑をかける訳にもいかず、親方に相談して独立を承諾していただきました。「握る」という基本的な使命と同時に、徐々に会にも復活させていただき、僕が小樽に定住するきっかけになった人と人のつながりを仕事にも転化させていきたいと考えています」

大売りではなく小売りの精神
 世に言うマーケティングは確かに正しい科学であるが、大局的に大枠からしぼりこんだ網掛けをする「大売り」に誤解されている。そもそも「小売り」という概念は、「人と人のつながり」を大切にすることから名付けられている。この小売りの精神を忘れたマーケティングは机上の空論でしかない。
 武田氏は現場の手探りの中で、小売りの精神と小樽の良さに接点を見つけ出した。
 また武田氏の人柄は100人中100人が「人なつっこさ」を感じる。むしろ元々小樽人ではないかとさえ思うほどだ。
 小樽人が忘れた元祖小樽人が都会から舞い降りた。

<写真提供:濱田 剛 氏>