小樽の皆さま、小樽出身の皆さま、小樽ファンの皆さまへ! 自立した小樽を作るための地域内連携情報誌 毎月10日発行
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帰化人(47) 小樽こだわりのライフスタイル

社会の土壌は人のありよう?
岸川 沙織 氏
北海道中小企業家同友会
しりべし・小樽支部事務局
〒047-0031 小樽市色内1-9-6 
TEL 0134-25-9191   FAX 0134-25-0765
E-mail otaru@hokkaido.doyu.jp
URL http://www.hokkaido.doyu.jp/shiri-otaru/



北海道へ
 昭和61年2月福岡市博多区板付生まれの岸川氏は農業に興味を持っていたことや雪が見たかったことから北海道の帯広畜産大学に入学。畜産学科の「草地環境ユニット」という牧草地の草を効率よく生やすために、光や水と土そして殺虫剤などのバランスを研究する部門に所属された。その草地が対象とするのは牛(乳牛)である。

ウイグルへ
 大学在籍中に1年間中国の新疆ウイグル自治区の新疆農業大学草地学科に交換留学される。卒論のために牧草地であるウイグル自治区の土壌や気象データ収集のためである。ところがウイグル暴動(民族紛争)が勃発し、折角収集したデータの国外流出が禁じられてしまう。1年間の研究が使用できなくなるという人間界の不条理を経験する。茫然自失状態で帰国し、働きながら学ぶ形で1年間過ごし、2010年帯蓄の大学院に入学し、バイオディーゼル燃料の研究を始める。

同友会へ
 バイオディーゼル燃料とは生物由来油から作られるディーゼル燃料である。ヒマの木からとるヒマシ 油などから作られ、アフリカやブラジルでは既に燃料化されているという。さて2年が経過し就活を迎えるが、彼女の研究生活で得た確信は「北海道の農業の有望さ」であった。農薬メーカーや農業機械メーカーへの内定を受けてからがおもしろい経路をたどる。たまたま札幌で北海道中小企業家同友会主催の企業説明会に参加し、最後にのぞいたブースに主催者の同友会が控え、事務局員を募集していたのだ。そこで「農業経営部会」という活動を知るのだ。勢いで筆記試験を受けたがほとん ど点数がもらえる結果ではなかったらしい。しかし彼女の研究や北海道農業への展望を聞いていた同友会の面接官が内定をくれた。彼女の潜在性が「人間や経営をヌキに農業は展望できない」ことを訴えていたかのように、同友会への入局を決意する。それはまさに暴動という人間現象の不条理のために大切な研究が無駄になることへの警鐘が鳴っていたのかもしれない。

小樽へ
 2012年6月から研修として一週間ほど北海道中小企業家同友会とかち支部へ通い、2013年4月からしりべし・小樽支部へ赴任。
「小樽観光の核は運河だと思いますが、そこには観光客ばかりが目に入り案内する現地の人々の姿が見えないことに疑問を感じました。私の少ない観光の経験では、旅館や施設やタクシーの案内人や営業の方々がだいたい待ち構えていたものですから」
 たしかに全国の観光地には営業が待ち構えていることが多い。彼女が不思議に思った現象は小樽の観光への初々しさか新しさか、いずれにせよこれからの課題と思える。この感想のおもしろいのは、彼女の潜在性である「なぜもっと積極的に動かないの」という人間の行動への渇望が首を傾げていることだ。

後志と十勝
 とかち支部の農業経営部会では新しい農業経営モデルへの即戦力がみなぎると同時に、どんどん現実化するリアリティがあったという。しかし後志では十勝同様に若者はいるが新しいことへの感度が伝わりにくいともいう。
 植物が土壌から育つように、人も社会という土壌から育つ。新しい芽が誕生する土壌とはどういう社会なのだろう。たとえば「俺の時代まではこういう方法で生きてこれたが、この方法ではもう限界が見えている」という親父(大人)がいて、「俺も親父と同じ農業で生きるが同じ方法で生きるなら親父を越えることはできない」と新しさを求める息子(若者)が存在することではないだろうか。
 つまり親父が既存に執着していたり、べき論を語っていたり、あるいは息子が依存心を持っていたり、守りに入っていれば、同じ若者でも新しさへのリアリティは雲泥の差がつく。
 もし彼女の直感が正しければ、この動物的感は見過ごせない。