扉
建物の開口部で人の出入り口を扉というが、この用語、和風では「戸」といい、洋風では「扉」というらしい。開き方にも違いがあり、基本的に和風では横に開閉し、洋風では前後に開閉する。これは内外の概念の違いからくるのかもしれない。和では内外を戸で仕切るが、洋ではベッドで仕切り、習慣として靴を脱ぐ場所となっている。和では戸を開けて靴を脱ぐことから「靴脱ぎ場」を要する。このスペースを考えて横の開閉となったというのは考えすぎか。
小樽の街での扉の特徴を抽出する材料として、最初にあげられるのは倉庫の扉(写真1、2)であろう。荷の出し入れに必要な広い面積の開口部で、保管に厳重な鉄の扉はいかにも歴史的な重厚さを放っている。また倉庫の再利用物件では博物館(写真3)やコンサートホール(写真4)は重厚さに加えオシャレ感がにじむ。
また国指定重要文化財である旧日本郵船(写真5)は建物に比べて実にハイカラであり、旧第四十七銀行(写真6)は年季が入り渋みが重厚さに調和している。本年リニュアルした旧後藤商店の再利用(写真7)は夏期間むしろ扉なる存在がない粋さが伝わってくる。
住宅では出窓との調和や草花で装飾(写真8)され、センスのいい生活感が漂うものや、玄関とベランダとのコンビネーションを考えた斬新なもの(写真9)が登場している。
街並み散策もいいが家並み散策も楽しい。そこに住む人々のライフスタイルの表現が感じられるからだ。特に小樽では半年、雪景色に埋もれるから、短い夏の開放感に浸り、季節を大事に過ごす楽しみでもある。