小樽の皆さま、小樽出身の皆さま、小樽ファンの皆さまへ! 自立した小樽を作るための地域内連携情報誌 毎月10日発行
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COLUMN

ライフスタイル産業
編集人 石井 伸和


小樽衰退
 人口が減少し事業所も雇用も収入も減少、挙げ句には生産人口の緒についた若者から流出、高率な高齢化と少子化だから未来が描けない。これが今の小樽だ。せっかく運が開けた観光都市になっているのに、「ゴミが増える」「交通渋滞が起きる」「人だかりで港にも行けぬ」などという愚痴が未だに充満している。人口が減り産業が衰退し未来が描けない都市や地域は山ほどあるのに、開けた運にまで背を向けているかのようだ。

衰退の尺度
 人口減少は小樽だけではない。日本の人口が2008年の1億2千800万人をピークに、東京や沖縄などを除いて既に減少傾向をたどりはじめている。
 人口を支える産業が衰退すると食えるところへ向かって流出現象が始まる。だから衰退の尺度は人口の増減で測ることができるし、その原因が産業の衰退にあることも、誰もが知る常識である。企業誘致や緊急雇用策も新産業創出も功を奏さず、産業振興は簡単ではない。

住みたい街という需要
 角度を変えて小樽を見つめてみる。「みんなでつくる地域・生活情報サイト 生活ガイド」が行った2012年住みたい街ベスト100の中、小樽はなんと17位にランクされている。1,742もの自治体があるのにだ。こんな光栄はない。昨年、歴史文化研究所が調査した際、東京の退職を控えた団塊の世代200人のうち、第二の人生の移住先候補地として北海道は30%程度だったのに、同じ北海道でも小樽は50%以上になった不思議な事実から、小樽は第二の人生の移住先候補地として十分需要がある。

需要の分析
 行きたい街というニーズがあったから小樽は観光都市になった。だが冒頭で言ったようにまだまだ観光供給整備の深度も精度も低い。
 これはさておき、一方住みたい街というニーズも十分あることが確認できた。かりに第二の人生の移住先としての需要を仮定してみよう。
 なぜそう思うのか。高層ビルの大都市や人間をマス目で認識しがちな社会にウンザリし、ヒューマンな都市である小樽に白羽の矢が立った。たしかに山と海に囲まれ、高層ビルもなく人々の表情が伝わり、10分上れば森の静寂に着き、10分下れば街の喧騒に入ることができるヒューマンスケール。歴史が封印されずに活かされ、多くの人々が訪れ見放されてもいない。

ライフスタイル産業
 ここまで考えて先の問題提起「仕事がなければ人は去る」という産業振興に躍起になることも重要だが、急がば回れでライフスタイル都市を目指してみる手もあるのではないかと考えた。自分らしい生活をしようと多くの団塊の世代が小樽に移住し、彼らは年金も貯蓄もあるからアクセク働く必要も無い。確かに生産人口ではないが、日本史上突起した感性を持ち、国際化のなんたるかを知り、政治の怖さを知り、ITの先駆けを記した層が創造するライフスタイルは十分期待できる楽しみがある。ある意味「変人居住区」あるいは「ライフスタイル特区」、人に会うことが楽しみな街ができそうではないか。
 だから小樽はライフスタイル産業とでもいう生活産業を研究してみるのも一興。小樽は基本的に水もふんだんにあってしかも美味しい。水産も農産も近隣で十分豊かに得られる。移住者の中から独自の食文化、独自の住まい文化、独自のファッション文化、独自の休日、独自のコミュニティのと関わりを分析し、これらを調達しあるいは製造して支援する産業である。こだわりの世代だから、マニアックな専門性も重要だ。