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観光学(55) 観光を読む

東京五輪と札幌アジア大会
北海道大学 観光学高等研究センター
センター長・教授 石森 秀三



東京五輪2020
 リオデジャネイロで開催された国際オリンピック委員会の理事会で、2020年の夏季五輪開催地が東京に決まった。福島原発の汚染水漏れ問題や放射能汚染問題などで東京は大きなハンディキャップを抱えると予測されていたが、イスタンブールとマドリッドも様々な課題を抱えているために、すんなりと東京に決まった。安倍首相が政府専用機でブラジルに乗り込んだので、事前にかなりの情報を得てのことであろうと推察していたが、ようやく悲願が成就されたことになる。
 早速、日本のマスメディアや週刊誌は「東京五輪開催でニッポンが蘇る」「日本経済の『黄金の七年』が始まる」「株価は上がり、景気は良くなり、そしてデフレからインフレへ」「日本の底力を見せるとき」などと大はしゃぎしている。久保成人観光庁長官も「東京五輪は訪日外国人旅行者数2千万人の高みを目指す日本の観光にとって強力な追い風になると考えている」と歓迎の意を表明している。
 たしかに「失われた20年」を経験した日本にとって、2020年の東京五輪開催は様々な意味においてプラスの要因に働く可能性が大である。されど地方の視点で東京五輪を見てみると、必ずしもみんなが万々歳という訳ではない。今後、五輪開催に向けて巨額の資金が首都圏に投入されると共に、首都圏が巨大な磁力で話題も人も引き寄せてしまうという危惧を抱く人々が地方には数多く存在する。まさに「一将(東京)功成りて万骨(地方)枯る」という事態への危惧である。

札幌冬季アジア大会
 マスメディアはあまり報道していないが、2017年に札幌市と帯広市で「第8回冬季アジア大会」が開催されることになっている。五輪と比べて小規模だが、約30の国と地域、約1,200人の選手が参加予定である。規模は小さくても既存の施設を活かして国際大会を開催することは評価すべきだ。
 札幌は1972年に冬季五輪を開催した。札幌五輪のテーマソング「虹と雪のバラード」(河邨文一郎作詞、村井邦彦作曲)はトワ・エ・モアが唄って大ヒット曲となった。「虹の地平をあゆみ出て、影たちが近づく、手をとりあって、町ができる、美しい町があふれる旗、叫び、そして唄、ぼくらは呼ぶ、あふれる愛に、あの星たちのあいだに眠っている北の空に、きみの名を呼ぶ、オリンピックと」。札幌は冬季五輪をきっかけにして都市基盤が整い、大都市へと発展した。その後、第1回(1986年)と第2回(1990年)冬季アジア大会を札幌で開催し、2017年は三度目の開催になるが、スピードスケート競技は帯広市で開催することになっている。
 夏季に開催されるアジア競技大会(Asian Games or Asiad)は1951年から開始され、これまでに16回開催されている。第17回大会は来年9月に韓国のインチョンで開催され、50近い国と地域、約1万人が参加予定である。日本では、1958年に東京、1994年に広島で開催されている。
 東京を羨んであれこれと愚痴る前に、それぞれの地域で出来ることを「民産官学の協働」によって一つ一つ積み重ねていくこともまた重要である。地域観光の王道は、歳月をかけて「民産官学の協働」で地域資源を持続可能なかたちで有効に活用しながら、地域住民と観光者が感動を共有し合うことである。