可能実行・不可能利用
『ザ・ホワイトハウス』(The West Wing)は、アメリカの放送局NBCで1999年から2006年にかけて放送されたドラマである。この中でこんな台詞が語られる。「可能なことは実行して、不可能なことは利用すればいい」
いかにも政治的な言い回しだ。頭の固い日本人ならこんがらがる。可能なことを実行するのは当然だが、不可能なことは可能を目指して努力するのではなく、利用すればいいとくる。常に同時にクリアしなければならない山積みの課題に囲まれたホワイトハウスの政治手法である。またホワイトハウスは大統領のスタッフで構成されており、大統領本人以外は大統領の権威を借りて法整備の根回しをかけるので、大統領はじめ党や議会やマスコミなどの力を利用するという考え方である。
その力関係が実に微妙で、ドラマを展開させる内容の多くに竹を割ったような解決は期待できない。これが政治のリアリティだろう。形は繕えても利用してできた形で実力ではないからだ。
歴史文化研究所
副代表理事・編集人 石井 伸和