小樽の皆さま、小樽出身の皆さま、小樽ファンの皆さまへ! 自立した小樽を作るための地域内連携情報誌 毎月10日発行
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観光学(57) 観光を読む

アートを活用した地域おこし
北海道大学 観光学高等研究センター
センター長・教授 石森 秀三



瀬戸内国際芸術祭
 瀬戸内国際芸術祭が11月上旬に閉幕した。2010年に第1回目の芸術祭が開催され、トリエンナーレ(3年に一度開催の芸術祭)なので今年が2回目の開催。実行委員会の会長は香川県知事、総合プロデューサーは福武總一郎(福武財団理事長)、総合ディレクターは北川フラム(女子美術大教授)。幸い、私は2回とも参加の機会があった。
 芸術祭の舞台となる瀬戸内の島々は美しい自然景観や伝統的な文化が残っているが、高齢化や過疎化によって地域の活力が失われつつある。芸術祭の開催によって島の人々と来訪者が交流することによって活力を取り戻し、島々の美しい自然や伝統を生かした現代美術を通して、瀬戸内海の魅力を世界に向けて発信し、地球上のすべての地域の「希望の海」になることが目指されている。
 今回の会場は直島、豊島、小豆島などの12の島々と高松港、宇野港周辺。会期は春、夏、秋の3期(108日間)で約107万人が入場。24の国・地域から参加した約210組のアーティストたちが様々な芸術作品を展示した。会場となった島々の人口を合わせても約3万5千人のところに富山県の人口に等しい100万人を超える来訪者が入場したので大きなインパクトが生じた。
 第1回目の際には日常の生活空間で展開される芸術祭に戸惑いを感じた住民たちも今回は数多くの来訪者を喜んで受け入れ、交流を楽しんだと言われている。島全体を美術館のようなかたちにして芸術祭が展開されているので地域への波及効果が大きい。

大地の芸術祭
 アートを用いて地域の活力を生みだす試みは2000年に開催された「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」が最初といわれており、世界的に注目を集めている。この芸術祭は「人間は自然に内包される」を基本理念に、新潟県越後妻有地域(十日町市と津南町)の広大な里山空間を美術館に見立て、アーティストと地域住民との協働による「交流人口の増加」「地域の情報発信」「地域の活性化」などを目指している。
 大地の芸術祭では、芸術作品を一ヶ所に集中的に展示するのではなく、200の集落をベースに作品を点在させ、現代の合理化や効率化の対極として徹底的な非効率化が試みられている。訪れた人は里山空間の豊かさを五感を通して感じ取り、自らの人生を再考する絶好の機会になりうる。この芸術祭では大都会の若者たちが数多くボランティアとして参加しており、越後妻有地域は都市居住のサポーターたちにとってかけがえのない「希望を生みだす場所」としての意義を担っている。大都市居住のサポーターにとって「新しい故郷」としての役割を果たしつつある。この芸術祭のアートディレクターは北川フラム氏が務めており、越後妻有での成功モデルにもとづいて企画されたのが「瀬戸内国際芸術祭」といえる。
 北海道では、札幌国際芸術祭が来年7月から9月にかけて開催されることが決まっている。坂本龍一氏を芸術監督に迎え、「都市と芸術」をテーマにしたトリエンナーレが開催される。近代化モデル発祥の地ともいえる札幌で近代文明を見直し、21世紀にふさわしい文明のかたちをアートの視点から考える芸術祭になるらしい。
 いずれにしても、日本はすでに成熟時代に入っており、アートを活用した地域おこしや地域活性化が今後も重要な役割を果たすことは確実だ。