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観光学(61) 観光を読む

観光立国をめぐる不都合な真実
北海道大学 観光学高等研究センター
センター長・教授 石森 秀三



アル・ゴアと不都合な真実
 アル・ゴア氏はクリントン大統領とコンビを組んで、1993年から8年間にわたって米国副大統領を務めた。ゴア氏は若い頃から環境問題に関心を抱いており、2006年には「不都合な真実」と題された長編ドキュメンタリー映画に主演して、大ヒット作品になった。
 この映画はD・グッゲンハイム監督の作品で、内容はゴア氏が長年取り組んできた地球温暖化問題を様々な映像を用いて明らかにしたものであった。今でこそ地球温暖化問題は当たり前に重要とみなされているが、当時は米国においても国民のほとんどが重視していなかった。当時のブッシュ政権は「地球温暖化は単なる学問上の仮説で現実的にはそんなことは全く起きていない」という公式見解を出していた。

ノーベル平和賞受賞
 この長編ドキュメンタリー映画の放映で一挙に地球温暖化問題が世界的課題と認識されるようになった。その結果、アル・ゴアとIPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)は2007年にノーベル平和賞を共同受賞した。人為的な気候変動について、より多くの知見を集積・分析するための努力と、そのような人為的気候変動を是正するための基礎を構築するための努力が評価された。
 広範な気候変動は人類の生活を変化させ、地球資源をめぐる激しい対立や戦争の危険性を生じさせるために、地球温暖化問題を世界的課題として広く知らしめたことは世界平和につながるとみなされ、ノーベル平和賞が授与された。ただしゴア氏主演の映画は内容に事実誤認があり、データを誇大化するなど、センセーショナリズムに走り過ぎている、という批判がなされたのも事実だ。

観光立国と不都合な真実
 ゴア氏は地球温暖化に関する不都合な真実を暴露したが、私はいま日本における観光立国をめぐる不都合な真実について調べている。「観光立国」というのは言うまでもなく「観光で国を成り立たせる」政策のことが意味されている。2003年7月に当時の小泉純一郎首相が国会における施政方針演説の中で観光立国宣言を行い、観光立国が本格化した。
「観光立国」推進が積極的に展開されて十年が過ぎたが、本当に観光立国によって国全体が元気になっているのだろうか?昨年末にインバウンド1,000万人が達成され、次に「2020年インバウンド2,000万人」が大きく喧伝されている。「東京五輪2020」がすでに決定されているので、「2020年インバウンド2,000万人」は容易に達成可能な国家目標であろう。ただしその結果として今後、首都圏ばかりが隆盛化して、「地方切り捨て」が進むとするならば大いに問題である。
 いずれにしても、インバウンドの成果ばかりが大きく取り上げられているが、日本人による国内旅行は停滞したままであるし、観光関連支出も低迷したままである。観光分野のローカルコンテンツ比率も依然低いままだ。
 観光庁予算はたった100億円程度に過ぎないが、それで本当に観光立国が成就できるのだろうか?観光立国はそれほど簡単に成就できるものなのだろうか?また優秀な人財が観光分野に命を捧げて観光立国の実現を図っているのだろうか?ノーベル平和賞を受賞したゴア氏の成功を見習って、観光立国版「不都合な真実」と題するドキュメンタリー映画を制作する必要があるかもしれない。