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地産(43) 後志でなにが生産されているの

みそまんじゅう
有限会社 梅屋
坂田 愛子 氏


創業は明治後期〜大正初期?
 国道230号を洞爺湖方面に向かい、留寿都村「道の駅230」を過ぎて約700m、右手に赤い看板とのれんが見えてくる。ここが元祖みそまんじゅうの店、梅屋。創業は、と聞くと、およそ100年位前。しかし、これが定かではないという。
 現在、お店を切り盛りしているのは坂田愛子さん86才。とてもこの年齢には見えない若々しさと機敏な動き。創業年が定かではない理由の一つは、経営を親族が代々引き継いできたものではなく、全く血筋に縁のない人が過去3代にわたり経営してきたからだ。
 創業当時(明治後期?)はまだ開拓時代。初代店主は大福餅のみで商いをし、農民の活力になっていたという。
 ある日、店に旅の僧侶が立ち寄った。その僧侶は店主に「みそまんじゅう」の作り方を伝授していった。僧侶は、大福餅とともにみそまんじゅうも売れば、馬車追いの人たちや旅の人に喜ばれるだろうと言い残して行った。当時の留寿都村は農産物の集散地として栄えた地域で、馬車の往来が多く山越えの前の休憩地でもあった。

みそまんじゅうとは
 このまんじゅうのおもな材料は米粉、小麦粉、黒糖、小豆餡など。まんじゅうというと、ふわっとした温泉まんじゅうのような生地を連想するが、外側の生地は北海道、東北地方でよく食べられるべこ餅に良く似ている食感。もちっとした歯ごたえ。坂田さんの前の3代までは、この生地にみそを練り込んでいたという。少しだけ塩分を感じる味だったそうだ。おそらく労働者に好まれる味だったのだろう。

なぜ店を引き継ぐことに…
 今から36年前のこと、坂田さんは留寿都村の森林組合に勤務していた。今の店が近かったこともあり、3代目の店主とは顔なじみだった。往き来するうちに、店主から相談を持ち掛けられた。それは、高齢のため店を誰かに譲りたい、そして売却したお金を基に施設に入りたいということだった。候補者がいたので坂田さんは仲介に入り話を進めていた。ところが話が折り合わず破談。紆余曲折を経て坂田さんが引き継ぐこととなった。
 引き継ぐとはいったものの、菓子作りは全くの素人。OL生活からいきなり職人の世界への転身。まんじゅうを丸める手つきが良いと褒められはしたが、そんなことで商売ができる訳がない。最初の半年間は修業の毎日。しかも2年間は森林組合の仕事との掛け持ち。事務仕事の合間に店へ行き、まんじゅうを作っていたという。忙しさとプレッシャーで胃が悪くなった。幸い、職人さんが残ってくれたことで以前の味を出すことができたが、それでも味が変わったというお客様の声もあった。2年後、やっと森林組合を円満退職し、店に専念できるようになった。
 昭和50年代後半、全国で広まった一村一品運動により、地方が注目されるようになった。その流れでみそまんじゅうもデパートの物産展で人気となり販売個数が大幅に増えるようになった。手づくりの製造は大変だったが、商売は順調だった。

みそを抜いたみそまんじゅう
 物産展で各地を巡った坂田さん。あるとき雑談の中で、「みそがつく○○は縁起が良くない」とういう話になり、悩んだ末に材料からみそを抜くことにしてみた。しかし、これはみそやみそまんじゅうを否定するものではなく、坂田さん自身が気持ちよく商売ができるようにという思いからだった。実際にみそを抜いてみると、以前よりさっぱりとした味になり、違和感は無かった。形も食感も以前のまま。これで今後は行こうと決めた。

おいしさの秘密
 デフレ経済とともに近年売り上げも厳しくなったが、みそまんじゅうは根強いリピーターに支えられている。おいしさの秘密は独特の餡。専門の職人さんが自ら練り上げた上品な甘さにある。また黒糖の味と香りが決め手。現在、娘夫婦を中心に6名で毎日手づくりしている。忙しい時は午前0時から始める時もあるという。添加物を使用していないため、子供に食べさせるために買う方もいる。消費期限は3日間と短いが冷凍保存だと約1ヵ月間はもつ。素人からスタートした坂田さんはおいしく食べていただくために、必ず消費期限をお客様に念押しする。この正直さと頑固さが店を支えてきた。
「函館のお客様が朝6時に留寿都へ行くので、どうしてもまんじゅうを買いたいという電話が冬にありました。朝の6時前から雪かきをして、ストーブをつけて待っていました。お客様がやって来て600円買ってくれました。600円のために2時間も前から店を開けましたが、こういうお客様を大切にしているんですよ。」一番のおいしさの秘密はこれでした。

有限会社 梅屋
〒048-1731
虻田郡留寿都村字留寿都53番地1
TEL&FAX 0136-46-3450
*国道230号沿い梅屋、道の駅230、郷の駅ホッときもべつ、きのこ王国大滝本店にて販売しています。