デザイン
編集人 石井 伸和
designare(デジナーレ)
デザインの語源はラテン語のdesignareといわれる。その意味は「ある問題を解決するために思考・概念の組み立てを行い、それを様々な媒体に応じて表現すること」と難解である。「ある問題」とは政治・経済・文化すべてのジャンルにおける問題といっていい。その問題は感じる人によって度合いが異なる。ある人は重要な問題ととらえても、別な人は問題とすら感じない場合もある。そこで問題と感じるのは人であるから、その人はその問題をどのように把握するかを「思考・概念の組み立て」という。
たとえば列車が事故を起こしたというニュースを聞き、その原因を探る中で、運転者の不注意で留まるか、あるいは運営会社の体質にまで深掘りしていくかは「思考・概念の組み立て」の違いになる。
そして、運営会社の体質にまで深掘りしていくとして、「それを様々な媒体に応じて表現する」とは、会社の事故処理、会社の体質改善、改善方法や目標などを決め、真摯な態度で媒体に発表するということになる。この段階では問題を解決するための姿勢が示される。
つまりdesignareとは、「問題察知→問題背景や構造の把握→問題解決の段取り→問題解決までの姿勢」という問題解決への体系と理解できる。
design(デザイン)
一方、今日日常的に使われているdesignは、既述の体系の最後の「姿勢」のみが強調され「形」として一人歩きしている。かりに問題は「人気を博すため」に概略され、「人気を博すための形」いわゆるマーケティングに組み込まれて普及している。しかもジャンルは多彩となり、グラフィックデザイン(平面)、インダストリアルデザイン(工業)、アーキテクトデザイン(建築)、ファッションデザイン(服飾)、インテリアデザイン(内装)などに細分化されている。
まちづくりデザイン試論
全国的にも小樽の「まちづくり運動」は先駆けであるが、ここらで今一度、「まちづくりデザイン」をdesignareの語源に従って考えてみたい。
小樽の問題は実に多い。人口減少、高齢化、少子化、産業衰退、市財政困窮など数え上げればいくらでもある。そこで最も力を入れるべき問題を産業衰退と設定する。さらに小樽の産業の中でも追い風が吹いている観光を牽引役とする。儲けられる観光が成立すれば食品・土産・宿泊・交通などの産業が向上し、域内需要も向上する。すると働く場所が増えるから労働人口が増え高齢化と少子化率が下がる。産業が向上し人口が増えた分は税金として市財政に貢献する。ここまでは机上の空論としても異論はそれほど出ないだろう。
観光価値
儲けられる観光とは価値ある観光の結果だ。その価値は世界的価値、時代的価値、歴史的価値、便益的価値、体験的価値など狙いは複雑系の中にある。人それぞれに感じ方や優先順位が違うからだ。
特に小樽観光に欠如しているのは世界的価値である。指摘されればそうだと思うが、おそらく誰一人積極的に「世界に誇れる、世界の先駆けをいく小樽観光」などとは思ってもいないだろう。
地域の歴史は世界に向かって開かれ、未来に向かって紡がれているなら、近代史を基盤として成立してきた小樽の観光も、世界に何をメッセージとして発信するかが待たれる。
こういうことをわきまえて街並み・建物・土産・飲食などをデザインする装置がほしい。