小樽港(8) 傾向と展望
〜小樽市産業港湾部港湾室への取材〜
小樽港将来ビジョン
平成19年に小樽市は「小樽港将来ビジョン」を発表した。経済団体・港湾業界・陸運業界・労働団体・漁業団体・市民団体・関係機関・小樽市で構成された小樽港将来ビジョン懇談会が平成17年9月から平成19年4月まで開催された4回の「懇談会」、14回の「研究会」を踏まえたものだ。
図1にあるように、おおむね20年後(平成39年頃)の小樽港の版図を「物流」「人流(交流・生活)」「水産」「研究(海洋開発)」の4つの部門に分類している。戦後は「物流」と「水産」ゾーンのみであったが、そこに「人流」「研究」が加わり、特に「人流ゾーン」が拡大していることが顕著になっている。
物流の傾向
小樽港は戦前、北海道でも貨物量でトップを走っていたが、今や苫小牧(平成24年9,940万トン)の約9分の1(平成24年1,124万トン)である。一方戦後の小樽港の輸移出入推移では、昭和39年(小樽の人口ピーク207,000人)525万トンで盛り上がるが、以後減少し、昭和44年にフェリーが就航して平成8年にはピークの2,570万トンとなる。フェリーは平成8年が2,353万トンをピークに平成24年には1,019万トンと半分以下に減少してきた。また海上出入貨物品種別年次推移(平成15年と平成24年)では、麦11万トンから14万トンへ、電気機械2,600から12,600へ、衣類・見廻品・履き物1万から4万へ、家具装備品2,200から69,600へなど、80分類の中で4品目しか増えていない。
物流の展望
@道産小麦移出増大の可能性
麦の取扱が増えている中で、道産の小麦を国内へ流通させる可能性が増している。
A米・雑穀・豆の死守
小樽港の生命線である米・雑穀・豆を死守するために、大型貨物船の拠点港となるための働きかけ。
Bロシア船航路の充実
在来船ではサハリン・ナホトカ船の往復航路において道内産の輸出物を充実させ、RORO船ではウラジオストックとの定期航路の充実。
Cフェリーの死守
小樽港の命綱であるフェリーを盛り上げるために道産品の充実。
D港町埠頭のコンテナ便の充実
上海航路における輸出としての水産品、輸入としての雑貨の充実。
人流の展望
クルーズ船の誘致を柱に人流促進をはかっていく。図1にある通り、第三埠頭は人流促進の拠点となるが、5万トン以上の大型客船を接岸できる整備に向けて行政手続きは開始されている。
たとえば大型船が入れば係留施設使用料が港湾管理者の小樽市に入るが、その多くは警備費に支出される。したがって乗船者が個人的に使うお金が小樽の活性化につながる。クルーズ船には定点型と寄港地型とがある。定点型は小樽港を発着港とする場合で、千歳空港や札幌に近い港だから選ばれるが、出港・帰港のための利用となりやすく、小樽の観光市場への貢献は必然的に薄い。寄港地型はいくつかの港に寄港する中の一つとして選ばれ、小樽港への係留時間イコール観光時間となることから貢献度は高い。
事例
ちなみにバミューダ船籍のサン・プリンセス(77,000トン)は今年6月末〜9月末まで12回定点型で小樽発着、同じくダイヤモンド・プリンセス(116,000トン)は7回小樽に寄港地型で小樽寄港が予定されている。いずれも7割が日本人、3割が外国人と予測されている。
ダイヤモンド・プリンセスの乗客定員は2,670人、 乗務員が1,000人以上だから、3,000人前後が短時間で小樽観光を楽しみにしている。
日本人がクルーズ船で旅行する現象は新しく、安近短旅行ブームでデビューした小樽としても極めて新たな傾向である。だからこれから需要と供給の掛け合いによって、寄港地観光というジャンルが生まれる可能性を大いに秘めている。