麦芽水飴
京極町
遠藤 政吉 氏
京極町内から喜茂別町方面へ国道276号沿いに5分程走ると右手に「川上温泉」が見えてくる。今回紹介する水飴の作り手は、ここのご主人。遠藤政吉さん、85才。元々はこの地で農業を営んでいた。
そもそも水飴を作るようになったきっかけは、30年程前、町内で麦芽水飴を作っていた方がいて、その方から原料を譲るので作ってみないかという誘いからだった。水飴は、昔からこの地域では家庭で作られていたもので、大まかな作り方は知っていたという。名水と麦、澱粉がとれる京極では、当時は珍しいものではなかったようだ。教わったのは大量に作るための基本的なこと。一番難しいといわれる完成直前の火を止めるコツも難なく習得した。
麦芽水飴の原料は大麦の乾燥麦芽、澱粉と水。じゃがいも栽培が盛んな羊蹄山麓地域。当然、澱粉も生産されてる。大麦は種を仕入れ、政吉さんのじゃがいも畑の一角を使い栽培していった。水は京極の名水。原料は全て地場産。水飴作りには最適な地だった。
水飴作りは麦芽作りから始まる。大麦を水洗いした後、3日位水に浸ける。浸けておいた水を切り、容器に布などを敷き、その上に大麦を載せ布が湿る程度の水をかけ、その上に布などをかけて発芽させる。いわゆる大麦もやしを作る。芽が3p位伸びたら取り出し、数日かけて完全に乾燥させる。これで乾燥麦芽ができる。この間、約1週間。使う時はこの麦芽を粉砕する。
遠藤さんは1回に約200sの水飴を作る。澱粉200sに、粉砕した麦芽を8sと水で仕込む。まずは、澱粉と水を大釜に入れ、火にかける。温度が70℃近くなったら麦芽を入れ、このまま約6時間一定の温度で煮る。最初はドロドロ状態だったものが麦芽を入れるとサラサラ状になっていく。これは麦芽の糖化酵素が澱粉質を糖に変える作用によるものだ。釜の温度は低いと雑菌が入りやすくなり、高すぎると糖化力が落ちるという。作り手の釜の大きさや作り方で、適正温度は多少の幅がある。
きれいにできると、透明感のある淡い飴色になるという。ここまでが工程の約半分。これを一度濾して約6時間寝かす。
寝かした後、不純物を丁寧に取り除き、煮詰めていく。この時の釜の中の温度は180℃になるという。ゆっくりと混ぜながら10時間かけて煮詰めていく。釜から離れられない作業が続く。ちなみに夏場に仕込む時は気温が高いため170℃にするそうだ。煮詰めていくうちに、小さな泡がたくさん出てくるが、10時間後、仕上がりが近くなると大きな泡に変わっていく。火を止めるタイミングが近づく。長年作っている飴の色と粘度が同じようにするためには、火の止め方がもっとも難しい瞬間だという。ここは経験で判断するしかない。
出来上がった水飴は温かいうちに販売容器に入れていく。500g入りと1sの2種類。添加物は一切入っていないが、冷蔵庫に入れておけば1年は保存できるという。
現在、遠藤さんは高齢のため、年に2〜3回、お盆前と年末にしか水飴は作らない。町の特産品でもある水飴を次の世代に伝えていきたいが、年に数回しか製造技術を伝える機会がないため、すぐに覚えてもらうわけにはいかない。しかし、ここ数年その少ない機会に技術を受け継ごうと、仕込みの時から一緒に作業している方がいるという。あとは最終段階の火を止めるタイミングのコツをつかむだけ。何とか京極町の味がいつまでも続いてくれることを願う。
やさしい味
遠藤さんの作る水飴はやさしい甘さ。一般に市販されている水飴よりかなり濃い色に仕上がっているため、一見濃厚な味を想像するが、そのまま舐めてもしつこさがなくさっぱりとした後味。
普段、遠藤さんは昔ながらの食べ方で南部せんべいにつけて食べるのが好きだという。夏には水飴を水に溶かし冷蔵庫で冷やして時々飲むこともある。常連のお客さんは、昆布巻きや煮豆、色々な料理を作る時に砂糖の代わりに使っているようだ。このように甘味として、また料理の調味料として使われているのが遠藤さんの水飴。毎年、出来上がるのを待ってまとめて買っていく方もいるとか。天然素材の製品だから、安心を求める根強いファンがいるのだと思う。
まだ食べたことのない方はぜひ京極町へ足を運び、一度味わってほしい。
川上温泉
〒044-0132 虻田郡京極町字更進
TEL&FAX 0136-42-2566
*麦芽水飴は川上温泉、道の駅・名水の郷きょうごく「名水プラザ」にて販売しています。