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観光学(3) 観光を読む

アジアにおける観光ビッグバン
北海道大学 観光学高等研究センター 
  センター長・教授 石森 秀三



これまでの観光革命
 人類はこれまでに三度にわたる観光革命(観光をめぐる構造的変化)を経験しています。第1次観光革命は1860年代に欧州の富裕階級を担い手として発生し、第2次観光革命は1910年代に米国の中産階級を担い手として発生し、第3次観光革命は1960年代に日本を含む北の先進諸国で発生しました。
 観光をめぐる構造的変化は半世紀ごとに生じるというグローバル・トレンドを考慮すると、第4次観光革命は2010年代にアジアで生じる可能性が高い。アジア諸国は金融不安や政治的混乱や地域紛争などの諸問題を抱えていますが、その市場規模の大きさの故に、世界経済をリードすることが期待されています。

これからの観光革命…アジア
 2010年代に経済成長が継続されるならば、アジアにおいて観光革命が確実に生じることになります。まさに「観光ビッグバン」の発生です。観光は地球的規模でグローバル・フォース(世界を変える力)としての役割を果たしつつあるので、観光立国を急がねばなりません。
 アジアの諸都市では、すでにシンガポールや香港の空港が国際ハブ空港として世界的に高い評価を受けていますが、それらに加えてソウル郊外の仁川、上海、クアラルンプール、バンコクなどで新空港がオープンしています。これらの新空港は、フル稼働時には4,000m級滑走路を4〜5本もつ巨大空港になる予定です。アジアにおける観光ビッグバンは、日本人の常識を超える形で進展する可能性が大です。

富裕層旅行者の誘致
 20世紀における国際観光を主導してきたのは、まず欧州の富裕階級、ついで米国の中産階級、さらに北の先進諸国でした。2010年代にアジアで観光ビッグバンが生じるならば、21世紀の国際観光はアジアの人々がリードすることになります。
 そのため、日本の観光立国の成否は観光ビッグバンへの対応のあり方で決まることが明らかです。ただし、アジア諸国ではすでに国際観光客の獲得をめぐる大競争が始まっており、日本も戦略的に観光立国の推進を図らねばなりません。
 世界各国は富裕層旅行者をターゲットにした観光プロモーションに力を入れ始めています。世界で100万ドル(約1億円)以上の資産を保有する富裕層人口は2007年末に1,000万人を突破しました。原油高で潤う中東地域の富裕層が大幅に増え、インドや中国でも伸びが目立っています。日本でも151万人の富裕層が存在します。国別の増加率トップはインドで約22%、ついで中国が約20%、3位のブラジルが約19%と続きます。まさに※BRICs諸国において富裕層が急増しているわけです。

日本の富裕層観光客誘致戦略
 欧米諸国には富裕層を顧客にする旅行会社やコンサルタント組織が存在していますが、日本では外国人富裕層旅行者を日本に誘致するビジネスモデルが構築されていません。近年の日本では貧富の格差が論じられるようになりましたが、長らく「一億総中流」が当たり前だったので、観光分野でもとくに富裕層に焦点を当てることが少なかった。
 経済産業省と国土交通省は旅行業界と協力をして、世界の富裕層を日本に誘客するためのプロモーション活動や受け入れ体制の整備などを検討しています。2007年12月にはカンヌで開催された世界で最も権威のある富裕層向け商談会(ILTM)に日本が初参加しました。これまでの調査では、世界の富裕層が日本に高い関心を抱いていることが明らかなので、受け入れ体制の整備を早急に図らねばなりません。富裕層旅行者の受け入れは日本観光の質の向上に貢献することが確実です。


※BRICs
経済発展が著しいブラジル (Brazil)、ロシア (Russia)、インド (India)、中国 (China) の頭文字を合わせた4ヶ国の総称。本来BRICsのsは英語の複数形を表すが、BRICSとしてSが南アフリカ (South Africa) を表す場合もあり、さらにインドネシア(Indonesia) を加えた6か国の総称として「BRIICS」と表記することもある。