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観光学(8) 観光を読む

若者の旅行離れと旅行喚起
北海道大学
観光学高等研究センター 
  センター長・教授 石森 秀三



若者のスポーツ離れ
 近年、若者のさまざまな「離れ」現象がマスメディアで取り上げられています。例えば、若者の「スポーツ離れ」が深刻になっています。世界各国でコンピュータゲームによるスポーツを楽しむ子どもが増えており、コンピュータによるスポーツゲームに興奮する子どもたちは、リアルなスポーツを避ける傾向にあります。また少子化や治安の悪化によって、子どもを屋外で遊ばせずに屋内でのゲームを大目に見る親が増えており、子どものスポーツ離れに拍車をかけています。
 国際オリンピック委員会のロゲ会長は子どものスポーツ離れが世界的に深刻化しているために「ユース五輪」を提唱しました。それを受けて、国際オリンピック委員会はすでにユース五輪を2010年夏季大会からスタートすることを正式決定しています。

若者が求める旅のかたち
 日本では若者の「自動車離れ」も進んでおり、同様に「旅行離れ」も問題になっています。日本観光協会総合研究所ではすでに「若者は本当に旅をしなくなったのか」という問題について調査を実施し、その成果を踏まえて、若年層の旅行需要喚起策を今年6月に公表しています。
 それによると、若者たちが求める旅のかたちとして、つぎの4つのポイントが重視されています。@現代の若者は自分のテーマ・趣味にはお金を使うが、そうではない部分には極力出費を抑えるという「メリハリの効いた消費スタイル」を有していること、A若者は「自分だけのフロンティア探しの旅」に注目していること、B若者にとって「たまり場」が重要であるためにそれぞれなりのたまり場を探す旅の可能性が高いこと、C若者は「マスメディアとインターネットを併用」して各種情報を入手していること、などが指摘されています。

若者が好む観光地
 日本観光協会総合研究所は「若者たちに魅力ある観光地となる」ための5つの提言を行っています。
@まず第一歩として若者たちの言葉に耳を傾けること、A若者たちが自然に集う「たまり場」づくりに手を貸し、そこを情報交換の場として若者のニーズを知り、彼らと知恵を出し合って何かを一緒につくりあげること、B若者たちは特定の趣味やニーズにこだわる「ニッチマーケット」に集っており、それがマーケット外の一般人を集める可能性が高いこと、C現代の若者たちはメリハリの効いた消費スタイルを持っているが、こだわりのある物に対しては生活を切りつめても「買いに行こう」とする傾向が強いので、若者ブランドの限定品をつくること、D若者たちを「虜=ファン」にするためにマスメディアとインターネットを併用した情報戦略を磨くこと、などです。

利他主義的な若者への期待
 統計数理研究所が昨年実施した「国民性の調査」によると、現在の閉塞した社会状況を反映して、「ここ1ヶ月のあいだに『いらいら』にかかったことがある」人の割合は48%で、過去15年間で最高を記録。とくに、20歳代(63%)や30歳代(62%)などの若年層ほど多くなっています。
 一方、「自分の好きなことかどうかはともかく、人のためになることをしたい」という人の割合は、20歳代で43%、30歳代で52%といずれも過去最高。20歳代〜30歳代で「人のためになることをしたい」という人が増加している点に注目すべきです。自分のことだけを考える利己主義的な若者が多いことも事実ですが、その一方で利他主義的な若者が増えていることは日本の未来に一条の光を照らしています。
 今後「人のためになることをしたい」という利他主義的な若者が観光分野で活躍できる環境を整えるべきです。例えば、国家資格としての「観光創造士」制度の導入を図って、前途有為の若者が地域観光創造の担い手として活躍できる条件を整えることが重要です。
 観光立国の実現のためには、自律的な地域観光の発展と新しい観光の創造を推進する優れた人財が必要不可欠であり、人のためになりたい若者を活かすべきです。