小樽の皆さま、小樽出身の皆さま、小樽ファンの皆さまへ! 自立した小樽を作るための地域内連携情報誌 毎月10日発行
bg_top
alwHOMEalw読んでみるalw観光学(10) 観光を読む

観光学(10) 観光を読む

地域資源を結び合わす観光
北海道大学 観光学高等研究センター 
  センター長・教授 石森 秀三



地域再生の原動力としての観光
 現在の日本では「地域再生」が国家的課題になっており、政府は地域主導による各種の地域再生事業を推進しています。それらの多くは広い意味での「観光」にかかわる事業です。地域再生を実現するためには交流人口の拡大による地域活性化が不可欠であり、観光を基軸にした地域再生事業が重要になります。
 すでに北は北海道から南は沖縄まで、日本の各地域で観光を基軸にした交流人口の拡大を図ることが「地域経営の基本」になっています。今後の日本では地域主権を前提にして「民産官学の協働による観光立国」が不可欠になるので、そのための周到な体制づくりが必要になります。

農商工連携
 日本各地で今後、地域主権型観光振興が推進される際に、最も重要になるのは「地域資源を結び合わす観光」の振興です。
 日本では2008年に農商工等連携促進法が公布され、農業と商業と工業が連携して地域再生と取り組む「農商工連携」事業が推進されています。農林水産省と経済産業省は平成21年度に合わせて約330億円の予算を投入して、農商工連携の推進を図っています。ここで不思議なのは、農商工連携事業の中に観光事業が含まれていないことです。

欧州の農商工・観光連携事業
 欧州連合(EU)は1992年から地域格差や所得格差を是正する構造改革の一環として、LEADER(農村経済発展への協働連携)事業を推進しています。現在15ヵ国の約1,000地域で各種事業が支援されています。
 事業内容はグリーンツーリズムや持続可能な観光が主流ですが、農産物のブランド化、木工・ガラス工芸などの地場産業の振興、人材育成など多様です。自治体、企業、NPOやNGO、地域住民が対等なパートナーとして協働しています。EUはこの事業をとおして、新しい地域リーダーや斬新なアイディアの発掘を意図しており、行政サイドがリスクを恐れて敬遠しがちな事業こそを支援対象にしています。
 欧州諸国では農村経済発展の中心に観光がすえられて成功しています。それに対して、日本では農商工連携による地域再生の中心に交流人口が位置づけられていません。日本でも今後、交流人口の拡大に焦点を当てて、「農商工・観光連携」による地域再生事業を推進すべきです。
 農商工・観光連携に加えて、文化・観光連携、教育・観光連携、健康・観光連携、医療・観光連携、環境・観光連携など、地域のさまざまな資源を結び合わせるうえで観光を基軸にすることによって、従来にはない可能性を生みだすことができます。

起業家と地域マネジメント法人
 北海道大学観光学高等研究センターは現在、国家資格としての「観光創造士(仮称)」に関する制度設計を行っています。日本の各地域で地域主権観光の推進を行う際に、「民産官学の協働」の要の役割を果たすことのできる人材が不可欠になるので、一定の要件を満たした人に公的資格を付与して、地域で活躍できる体制づくりを急いでいます。
 観光創造士は各地の地域資源を持続可能なかたちで活用して、なりわいおこしや事業おこしを行うことが期待されています。要するに観光創造士は「起業家」として活躍することが期待されているわけです。
 観光創造士とともに重要になるのは、「地域観光マネジメント法人(仮称)」です。地域の様々な資源を持続可能なかたちで活用して、農商工・観光連携や文化・観光連携や医療・観光連携などを推進していく際に、新たな地域法人として「地域観光マネジメント法人(仮称)」を立ち上げて、地域資源を結び合わせる各種事業の展開を図る必要があります。その際に観光創造士は新しい地域マネジメント法人のマネジャーとして活躍することが期待されています。