小樽の皆さま、小樽出身の皆さま、小樽ファンの皆さまへ! 自立した小樽を作るための地域内連携情報誌 毎月10日発行
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観光学(11)  観光を読む

ふるさと起業のすすめ
北海道大学 観光学高等研究センター 
センター長・教授 石森 秀三



政権交代と雇用創出
 政権交代によって、鳩山内閣が誕生し、よりよい日本に向かって大きく変革が進むと期待していましたが、「政治とカネ」問題などでつまずいているために深刻な政治不信が生じています。民主党政権が早急に解決すべき課題は山積していますが、とくに「雇用創出」は最重要課題の一つです。
 現在の日本では完全失業率が過去最高を記録するとともに、非正規雇用や派遣労働の問題が深刻化しています。とくに若年世代のあいだでは雇用不安が高まっており、的確なソーシャル・イノベーション(社会的革新)が講じられなければ、雇用不安が深刻な社会不安を生みだす危険性があります。すでに日本では年間に3万人を超える人たちが自殺によって人生の幕を閉じるという悲劇が生じています。
 成熟した日本経済はもはや高度成長が望めなくなっており、正規雇用が飛躍的に増大することは期待できません。雇用創出だけにこだわらずに、もっと幅広い視野のもとでソーシャル・イノベーションを図る必要があります。
 日本はいま大きな曲がり角を迎えており、グローバル化、グリーン化(低炭素化)、少子高齢化、成熟社会化などのさまざまな構造変化に対応するために取るべき方策の一つが「ふるさと起業」であります。

自営業者と勤め人
 歴史を振り返ると、「高度経済成長」以前の日本では国民の約6割近くが農業をはじめとする自営業に従事していました。ところが現在の日本では国民の約15%程度しか自営業に従事していません。
 具体的に見てみますと、1953年に自営業者(家族従業者を含む)は58%を占めており、勤め人は42%でしたが、2004年には前者が15%で、後者が85%になっています。同様に、産業別従業者の比率を見てみますと、第1次産業従事者は1953年に全体の約40%でしたが、2004年には4.5%に減少しています。
 要するにかつて農山漁村に居住していた人たちが高度経済成長の始まりとともに大挙して都市部に移住し、企業や団体等に雇用されたことによって、農山漁村の過疎化が進むとともに自営業者が激減したわけです。そういう意味において、ふるさと地域で自営業者や起業者を増やすことは国家的課題としての重要性を担っているといえます。民主党政権はぜひとも自営業者や起業者を増やす政策の推進を図るべきです。

ふるさと起業塾
 企業による「雇用」も重要ですが、ふるさと・田舎・農山漁村地域などでの「起業」や「なりわいおこし」の可能性にこだわることも不可欠です。いわば「ふるさと起業のすすめ」が重要になります。農林業・畜産業・漁業などの一次産業はもちろんのこと、特産品づくりや商業や観光など、二次産業・三次産業を含めた「六次産業」の創造や「地域事業」の創造が重要になります。
 NPO法人ふるさと回帰支援センターの調査では、ふるさと回帰を希望する人の約半数は「仕事をしながらのふるさと暮らし」を求めています。しかも会社・団体での「勤め(雇用)」よりも、むしろ農林漁業や自営業など自ら「起業」したいと希望する人が約3割を占めています。
 すでに各地で農商工連携等人材育成事業や農村活性化人材育成派遣支援モデル事業などを活用して、「ふるさと起業塾」が動き始めています。農山漁村で地域資源を活用し、地域の人々と密接に連携・協力して、地域に根差した「ふるさと起業」を目指す人々のための学びの拠点が「ふるさと起業塾」です。
 北大観光学高等研究センターは、NPO法人ふるさと回帰支援センターと協働して「ふるさと起業塾全国ネット」を立ち上げています(問い合わせは、ふるさと回帰支援センターまで)。