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観光学(13) 観光を読む

いよいよ旅の本質へ
北海道大学 観光学高等研究センター 
センター長・教授 石森 秀三



京都の新・観光振興計画
 京都市は2000年に「おこしやすプラン21」を策定して、年間入洛観光客5,000万人実現を目指し、08年に見事に目標を達成しました。その結果にもとづいて、京都市は昨年から次期観光振興推進計画を策定し、このたび「未来・京都観光振興計画2010+5」を公表しました。この計画は小樽観光の未来を考える上でも重要なので、詳しく紹介いたします。
 私は昨年、この推進計画策定委員会の委員長への就任要請を受けた際に、京都こそが「量の観光」から「質の観光」への大転換の先陣をきるべきことを強く求めました。現在の日本観光に最も求められているのは「質の向上」であり、京都観光こそが日本観光の質の向上のモデルになるべきと主張したわけです。
 幸い、策定委員会および三つの部会のメンバーや関係各位の非常なる尽力のおかげで、「いよいよ旅の本質へ:世界が共感する観光都市」を目標にした「未来・京都観光振興計画2010+5」がとりまとめられ、公表されました。

いよいよ旅の本質へ
「旅の本質」とはなにか? 今回の京都市の振興計画では、「人に出会い、風景に出会い、心打たれる出来事に出会い、そして新たな自分自身に出会う。旅を通して、気付き、学び、癒され、元気をもらい、成長し、人生が深く豊かになる」ということが意味されています。そして、京都市は、このような旅の本質をより多くの人々に、誰が来ても、いつ来ても、思う存分堪能してもらえるような「世界が共感する観光都市」を目指しています。
 そのために、「観光スタイルの質」と「観光都市としての質」の両面において、観光の質の向上が意図されています。
「観光スタイルの質」とは、奥深い「ほんまもの」の京都の魅力をじっくりと五感をもって体感するとともに、古くから自然とうまく共生してきた京都にふさわしい環境にやさしい観光スタイルが意味されています。
 同様に、「観光都市としての質」とは、今ある魅力を守り育て、さら
に磨きをかけ、新たな魅力を創出し、安心で安全かつ快適な受け入れ環境を整え、必要な情報を提供し、観光客の不満を徹底的になくして、「また来たい」という思いを抱いてもらうとともに、市民自身が京都に誇りを持ち、魅力を実感して、おもてなしの心をもって観光客を迎えることが意味されています。

七つのプロジェクト
 旅の本質を堪能できる「世界が共感する観光都市」を追求するために、七つのプロジェクトが重要な役割を果たします。
 それらは、
@「暮らすように旅する」
A「歩いてこそ京都」
B「市民の京都再発見」
C「心でみる京都」
D「観光客の不満をゼロに」
E「新たな京都ファン獲得」
F「京都の魅力うまく伝える」
の7つのプロジェクトです。
 さらに、京都を訪れる観光客の特性に応じた「おもてなし戦略」が、修学旅行生、熟年世代、外国人観光客、ビジネス団体客(国際会議・企業研修旅行等)別に示されています。
「旅の本質」に焦点を当てて、京都観光を新しいステージに導く振興計画が出来上がったわけです。この振興計画が「絵に描いた餅」に終わることなく、5年後に実り多い成果を生み出すことを期待しています。
 これまでの日本では、かつて年間入洛観光客5,000万人の実現を目指した京都に代表されるように、「観光の量」がつねに追求されてきました。その結果、「観光の質」が軽んじられたままでした。
 日本経済が構造的不況に陥るなかで観光をめぐる大競争時代を迎えて、「いよいよ旅の本質」が問われる時代になりました。小樽観光も京都を見習って、旅の本質にこだわることによって、観光衰退に歯止めをかける必要があります。