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観光学(15) 観光を読む

トラベルヘルパーへの期待
北海道大学
観光学高等研究センター 
  センター長・教授 石森 秀三



国民の権利と義務
 日頃、憲法を読むことはほとんどありません。でも、ときには憲法を意識することも必要です。
 日本国憲法の第13条には「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大限の尊重を必要とする」と明記されています。つまり、個人の尊重(尊厳)、幸福追求権および公共の福祉などが明確にされています。
 第25条には「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と規定されており、国民の権利が明確にされています。ただし、第12条には「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであって、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負う」と明記され、国民の義務が明確にされています。

要介護・要支援者
 私はもうすぐ65歳になりますが、まだ一度も入院した経験がありません。健康・健常者であることは有難いですが、ユニバーサルツーリズムの重要性を身にしみて理解できていない点が気になっています。もうすぐ初期高齢者になるので、病気や障害が突然生じても不思議ではありません。そうなれば、てきめんにユニバーサルツーリズムの大切さが理解できるようになるはずです。
 日本には要介護・要支援の高齢者や障害者が435万人も存在するそうです。それらの人々にとって旅行に出かけることは夢のまた夢です。ユニバーサルツーリズムを可能ならしめる装置や制度が十分に整備されていない日本では、要介護・要支援の高齢者や障害者がいかに旅行に行きたいと希望しても、主治医が許可しませんし、家族も不安があるので二の足を踏まざるをえません。まさに要介護・要支援の高齢者や障害者は憲法が保障する幸福追求権を享受できていないわけです。
 2007年に施行された観光立国推進基本法の第2条には「…観光旅行を促進することが、将来にわたる豊かな国民生活の実現のため特に重要である…」と明記されています。ところが現実には要介護・要支援者にとって旅行は容易ならざることであり、豊かな国民生活が保障されていないのは問題です。
 要介護・要支援者も、健常者と同様にそれぞれのかけがえのない人生の中でさまざまな思い出を有しています。たとえば若かりし頃の思い出の場所やかつて住んでいた場所をどうしてももう一度訪れたい、という願望やノスタルジアを抱くことは至極当然です。むしろ健常者以上にそういう思い出へのこだわりが強いはずです。にもかかわらず、そのような夢や希望が実現されないのは遺憾なことです。

トラベルヘルパー
 2006年に設立されたNPO法人日本トラベルヘルパー協会は、すでにトラベルヘルパー(外出支援専門員)の養成を手掛けて実績をあげています。トラベルヘルパーの役割は、要介護者の旅行に同行し、移動、観光、宿泊ケアなど必要なサポートを行うことです。要介護・要支援者の旅行は容易ではないだけに専門家のサポートなしには実現が困難です。そういう意味で「ユニバーサルツーリズムのエキスパート」としてのトラベルヘルパーの重要性がもっともっと理解される必要があります。
 子ども手当も重要ですが、要介護・要支援の高齢者や障害者の旅行に対するサポートはかけがえのない人生を生き抜いている人々の尊厳にかかわる重要事項であり、国家的課題とみなして真剣に対応すべきです。小樽においてもトラベルヘルパーの活躍が期待されています。