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観光学(16) 観光を読む

中国人観光客への期待と不安
北海道大学 観光学高等研究センター 
 センター長・教授 石森 秀三



上海万博
 いま上海で盛大に国際博覧会(上海万博)が開催されています。今年10月末までの会期中に史上最多の7千万人の入場が目指されています。国や国際機関による246の参加数や会場面積も史上最大規模です。総事業費は約286億元(約3900億円)で、インフラ整備を含めると総額4千億元(5兆5千億円)が投入されています。まさに「昇竜中国」を象徴する華々しいイベントの開催ということができます。
 上海万博のテーマは「より良い都市、より良い生活」。日本産業館には「世界一トイレ」が出展されています。住宅設備機器メーカーINAXの温水洗浄型の最高機種で、中国での販売価格は5万4千元(約75万円)もするらしい。新聞の報じるところでは、中国人のお金持ちが別荘用に5〜6個もまとめ買いしています。
 富裕層に限らず、7千万人におよぶ中国人が世界各国の提示する「より良い生活」を目にする機会になるので、上海万博を契機にして、中国人のライフスタイルが大きく変化する可能性が高いわけです。現代の日本人のライフスタイルは、われわれ自身が自覚している以上に、少なくとも現代中国の人々にとって真似をしたいと感じるほどの高付加価値があるようです。

中国人訪日客
 中国人の外国旅行者数は急激に増えています。1996年に500万人を超えてから2000年に1千万人、03年に2千万人、05年に3千万人、07年に4千万人、09年5千万人を超えました。しかし5千万人の中国人外国旅行者のうち、訪日客数はたった約100万人に過ぎません。全体の2%に過ぎないという信じられないほど少ない状況にあります。
 中国人訪日客が数少ないのは明らかに日本の査証発給システムが原因です。長らく中国人団体観光旅行客に対する査証発給が中心でしたが、昨年7月から年収25万元(約350万円)以上の富裕層に対する個人観光査証の発給が開始されました。ところが所得申告などの公的書類の提出を義務付けていたために、個人観光査証の申請は期待したほど増えませんでした。
 日本政府は、今年七月から大手クレジットカード会社が発行するゴールドカード所有者に対して個人観光査証発給を認める方針を決めました。年収がおおむね6万元(約85万円)以上の「中間層」が対象になり、その人口は現在の約10倍の4千万人以上に増えると試算されています。さらに査証申請窓口も現在の北京、上海、広州のほかに、瀋陽、大連、青島、重慶が加えられました。

中国人観光客の功罪
 上海万博を契機にして、中国人外国旅行者数の更なる増加が見込めますので、査証発給の緩和は訪日客増加に効果を発揮する可能性があります。しかし内閣府の世論調査(2003年実施)では、約32%が「外国人観光客は増えて欲しくない」と答えるとともに、約53%が「外国人に対する査証免除や査証発給簡素化は必要ない」と答えています。さらに最近のインターネット調査では、約66%が「中国人に対する査証発給簡素化に反対」しています。
 いま世界的に観光ニーズが二極化しています。より低価格旅行を希望する旅行者が増える一方で、富裕旅行を希望する人も増えています。「低価格化」と「富裕化」という二極化が今後も進むと予測されています。
 小樽においても「安売り観光」を推進するならば、中国人観光客の来訪が促進されます。されど観光客が増えても、必ずしも地域が潤うとは限りません。一方で富裕旅行者を引き寄せることに成功すれば、地域が潤うことは確実ですが、そのためには受け入れ態勢を完璧に整えないといけません。
 小手先だけの対応で小樽観光の未来が拓けるほど甘い状況ではないことは確かなようです。今こそ「小樽観光の大計」が必要になっています。