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観光学(17) 観光を読む

世界ナンバーワンのリゾート
北海道大学 観光学高等研究センター 
  センター長・教授 石森 秀三



アジアのナンバーワン
 1979年に『ジャパンアズナンバーワン』という本がベストセラーになりました。ハーバード大学のE・ヴォーゲル教授が執筆した本でした。当時の日本は、日本株式会社と揶揄されたほどに政府と産業界が一体となって強力に工業立国と貿易立国を推進し、経済大国にのし上がりました。
 この本は、日本が国土の小ささや資源の少なさなどのさまざまな制約にも関わらず、諸問題や諸課題をたくみに処理して発展しており、米国や他の国々は日本から学ぶべきことが多くある、という内容でした。現に副題は「米国への教訓」とされていましたが、米国ではあまり注目されませんでした。ところが、日本ではあたかも米国を凌駕する世界でナンバーワンの国になったかのような錯覚を生じさせ、その後にバブル経済が発生しました。
 日本人の多くはいまだに日本が少なくともアジアでナンバーワンの国だと思っていますが、もはやそれは錯覚にすぎません。一人当たりの国民所得でみますと、すでにシンガポールがアジアでナンバーワンになっています。同様にGDP(国内総生産)でも、もうすぐ中国が日本を凌駕するという予測がなされています。

マレーシアのトップ企業
 マレー半島西側のマラッカ海峡にパンコール・ラウト島という小島が浮かんでいます。この島には英国の旅行専門誌によって「世界ナンバーワンのリゾート」という評価を得たパンコール・ラウト・リゾートが存在します。このリゾートは、ドイツの旅行専門誌による評価でも「ベスト・ビーチリゾート」として世界ナンバーワンにランキングされています。残念ながら、私はまだ一度も訪れたことがないので直接評価できませんが、世界の著名専門誌が世界ナンバーワンの評価を与えているので、素晴らしいリゾートに違いありません。
 パンコール・ラウト・リゾートを所有しているのは、マレーシアのトップ企業である「YTLコーポレーション」です。電力、水道、鉄道、建設、セメント、不動産、ホテル経営、リゾート経営などを幅広く事業展開しているマレーシア最大のコングロマリットの一つです。
 YTLという名称は創業者の名前Yeoh Tiong Layの頭文字に由来しています。この企業は外国での事業に力を入れており、保有資産の約六割はマレーシア以外の国々にあります。とくに英国における上下水道事業は順調に発展しています。東京証券取引所でも一部上場を果たしています。

ベスト・ウィンターリゾート
 YTLコーポレーションは、今年3月に北海道のリゾート施設(ニセコビレッジ)を米国のシティグループから総額60億円で買収しました。ニセコビレッジは羊蹄山を望むニセコアンヌプリの山麓にあり、約617haの面積があります(北海道ニセコ町に所在)。
 すでにヒルトンニセコビレッジが営業しており、スキーコースやゴルフコースがあります。シティグループは当初1,200棟のコテージを建設して、世界でも有数のウィンターリゾートに発展させる計画でしたが、YTLは自然環境の保全や景観保全を最重要課題とみなしているために、計画の見直しを行っています。
 YTLの創業者一族はすでに何度もニセコ地域を訪れており、自然景観の美しさや世界に誇りうるパウダースノーの価値を十分に認識しています。利益至上主義の乱開発ではなく、ニセコビレッジを世界ナンバーワンのウィンターリゾートに発展させることを目標にして、自然環境に調和した秩序のあるリゾート開発を目指しています。
 YTLはすでに世界ナンバーワンの評価を得ているリゾートを経営しており、10年後にニセコビレッジが世界ナンバーワンのウィンターリゾートになる可能性が高いわけです。そのような動きに連動して、小樽観光の新たな発展を考える必要があります。