小樽の皆さま、小樽出身の皆さま、小樽ファンの皆さまへ! 自立した小樽を作るための地域内連携情報誌 毎月10日発行
bg_top
alwHOMEalw読んでみるalw観光学(20) 観光を読む

観光学(20) 観光を読む

休暇分散化は小手先の愚策か?
北海道大学
観光学高等研究センター 
  センター長・教授 石森 秀三



休暇改革国民会議
 10月上旬に観光庁の音頭取りで「休暇改革国民会議」の初会合が開催されました。地域ごとに時期をずらして五連休を作る「休暇分散化」に向けた国民会議です。
 政府案によると、春と秋にそれぞれ土日を含めた5連休を創設し、全国を5つの地域(北海道・東北・北関東、南関東、中部・北陸信越、近畿、中国・四国・九州・沖縄)に分けて連休の時期を一週間ずつずらす案などが検討されています。この休暇分散化を実現するためには、祝日を休日と定めた現行の祝日法を改正する必要があります。
 いま日本の政治や経済の諸分野における劣化現象がさまざまに批判されています。それほど効果が期待できない「休暇分散化」を推進するために政府機関が音頭を取って国民会議を開催するというのは、まさに「愚挙」としか言いようがありません。

仏独の先進事例
 観光庁が音頭取りをしている休暇分散化は、フランスやドイツの先進事例を参考にしています。フランスでは国を3つのゾーンに分けて、学校の冬休みと春休みをずらしています。ドイツでは州ごとに夏休みの時期をずらしています。
 休暇制度の先進国である仏独両国のケースを模倣することは決して間違ってはいません。されど、物事の本質を軽んじて、表層的なかたちだけを真似るのは小手先の愚策とみなされても仕方がありません。
 日本人の有給休暇取得率は1992年の約56%をピークにして、その後は下がり続け、2008年には47%になりました。日本人が年間に取得する有給休暇の日数は平均でたった8日にしか過ぎません。欧州諸国では、フランス35日、スペイン27日、イタリア27日、ドイツ25日、オランダ24日、オーストリア24日、英国23日などです。日本が仏独から学ぶべきは有給休暇の取得日数の多さです。なぜ日本人は平均的にたった8日しか有給休暇を取得できないのか、ということこそを真剣に考え直さないといけません。
 民主党政権は、観光を成長戦略の柱の一つにしています。本来は「有給休暇完全取得法(仮称)」を制定して、法的に有給休暇を取得可能にするべきです。そうすれば、旅行需要が一挙に高まることは確実であり、観光によって地域が元気になり、成長戦略としての役割を果たすことができます。観光庁は今こそ真剣に「有給休暇完全取得法(仮称)」制定に尽力すべきです。

時限爆弾としてのIFRS
 日本でもようやくIFRS(国際会計基準)導入が視野に入ってきました。IFRSは企業会計報告における世界基準で、欧米の企業が取り入れています。今後、日本企業も世界中から資金を集めるさいにIFRSを導入していないと、大きなハンディキャップを背負うことになります。
 日本の企業にIFRSが導入されると、「有給休暇引当金」の計上が義務付けられます。要するに社員の有給休暇の未取得分は企業にとって負債とみなされるので引当金の計上が必要になります。そのために企業は社員に対して有給休暇の完全取得を強く求めるようになります。今後、企業の幹部は部下の有給休暇の取得状況をチェックして休むように命じることが求められます。そうでないと企業は負債を負うことになり、経営面での業績評価が悪くなります。そういう意味で、IFRSは日本における「有給休暇ビッグバン」を引き起こす時限爆弾になりえます。
 観光立国を成功させ、地域を元気にするためには、観光需要・旅行需要の拡大が不可欠です。従って「休暇の分散化」よりも「有給休暇の完全取得」の方がはるかに効果的です。「国民の生活が第一」というスローガンを掲げる民主党政権は小手先の愚策を捨てて、まともな政策展開を図るべきです。