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地域経済(13) 経済を読む

中国のデモから学ぶこと
小樽商科大学
ビジネス創造センター 
  センター長・教授 海老名 誠



 9月に発生した尖閣諸島の問題の影響は、その後思わぬ推移を見せています。日本が中国漁船の船長を逮捕した時、中国側が日本に強硬なクレームを申し立て、対抗措置としてレアアース等の日本への輸出制限などを実質行いました。
 これは経済制裁とも言うべき措置で、日本企業に与える影響が心配されました。影響は経済面だけに留まりませんでした。上海万博に招待された日本の高校生も足止めされ、様々な文化交流事業も延期に追い込まれました。日本が中国人船長を解放し、中国も日本人4名を解放しました。中国のこの様な強硬措置は、国際社会からも批判を浴び、貿易制限措置はWTO協定違反との声も挙がりました。
 その後、中国・日本政府は「両国の相互互恵関係が重要」との声明を発表し、これで衝突事件に端を発した問題は終わったと思われました。

多発する反日デモ
 ところが10月に入り、今度は中国各地で反日デモが頻発しています。これはインターネットでの呼びかけに応じた若者を中心とするデモだそうです。今月のデモは、中国の内陸部で多く発生しています。これは何故なのでしょうか。

 私は、中国の急過ぎる経済発展の歪が沿岸部と内陸部の間に極端な貧富の差を生み、内陸部を中心に経済面の不満が高まっていた所に、今「日本」という標的を得て、庶民が不満を爆発させていると見ています。TVなどの報道では、日本の国旗を焼き、日本レストランを襲撃し、日本車を壊すなど、日本を標的とした反日デモが中国全土に広がっている様な印象を持ちます。
 しかし、中国の全国民が「日本憎し」と思って居るような報道は、公平ではありません。

中国の体制
 中国はもともと「社会主義国」なのです。1978年の暮れに「社会主義市場経済体制」の導入という、世界にも類のない体制を敷いたのです。
 政治は社会主義体制だが経済は市場経済制度だという、考えれば考えるほど解らなくなる制度を導入し、その後30年余りで遂に今年はGDP規模で日本を抜いた国です。
 これまでの中国の経済発展のスピードは世界で最も高く、今年も年9%を超える経済成長が確実視されています。その結果、沿岸部を中心に富裕層が生まれました。一方内陸部では経済発展に取り残された貧民が多く出ました。
 2008年上海市の一人当たりGDPは内陸部四川省の5倍程度になり、貧富の格差がますます広がっています。中国内陸部では、同じ国の中で格差が拡大することに、不満が増大し続けています。

 私は「中国最大のリスクは、貧富の差による社会不安」と永年訴えて来ました。中国に対しては、法体系が変わる、コピー商品が多いなど、様々な批判があります。しかし、中国に進出する外国企業にとっての最大のリスクは、社会不安による国内の暴動でしょう。
 人は相対的な位置づけで不満を持ちます。貧しくても、周りが皆貧しければ我慢も出来ます。それが、周りは裕福になるのに、自分だけが貧しいと言う場合は、その不満を爆発させようとします。中国政府に直接不満をぶつけることが出来ない中で、今回の様に日本との問題が露呈して、一挙に不満のはけ口が日本に向かったと思われます。

多くの親日的留学生
 10月16日、札幌で「留学生日本語弁論大会」が開催されました。私は審査員でしたが、正に「わが意を得たり」との感を強くしました。今回は8名の出場者でしたが、内5名は中国からの留学生でした。留学生の殆どは「日本で学んで良かった、幸せだ」と言いました。「両国の友好のために、交流と理解を深めることが大切」と訴えたのも中国人でした。
 この様に、親日的で優秀な中国人も沢山います。小樽にもこれから沢山の中国人観光客が来ます。
 決して一方的な報道で中国人を嫌いになったりせず、自分の観察・体験を通じて公平に評価することが大切です。
(10月20日 脱稿)