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観光学(21) 観光を読む

観光庁事業の仕分け結果
北海道大学 観光学高等研究センター 
  センター長・教授 石森 秀三



観光庁のダッチ・ロール
 友人と一緒に酒を飲んで割り勘をすることはダッチ・アカウントと表現されます。真偽のほどは定かではありませんが、オランダ人が吝嗇(ケチ)であるためらしい。同様にダッチ・オークションはせり下げ競売、ダッチ・カーリッジはから元気・から威張り、ダッチ・ロールは飛行機が激しく横揺れ・縦揺れしながら不安定飛行をすることなどが意味されています。
 オランダには恐縮ですが、日本の観光庁は現在ダッチ・ロールを繰り返していて、非常に不安定な状態にあります。
 日本では長らく「観光」は国家的課題とはみなされずに、不当に軽んじられてきました。2003年に小泉純一郎首相が「観光立国」を提唱して状況が一変しました。私は小泉首相に指名されて観光立国懇談会の委員に就任し、何度も首相官邸を訪れて、今後の観光立国政策の方向性について検討しました。
 観光立国懇談会の提言を受けて、小泉首相は日本国家として初めて「観光立国宣言」を行いました。小泉首相は第五十六代目の内閣総理大臣でしたが、「観光」を国家的課題と位置付けた最初の宰相でした。日本にとって、03年は「観光立国元年」であり、08年には念願の「観光庁」が創設され、観光立国政策のヘッドクォーターとしての役割が期待されています。
 にもかかわらず民主党政権が成立してから、観光庁はダッチ・ロールを繰り返しています。

新成長戦略と事業仕分け
 今年6月に閣議決定された政府の「新成長戦略:元気な日本復活のシナリオ」では7つの戦略分野が特定されています。幸い、その中で「観光立国・地域活性化戦略」が明確に位置付けられています。政府は3K(環境、健康、観光)プラスA(アジア)に力点を置いて、約百兆円の新規需要を生みだす成長戦略を推進しようとしているわけです。
 ところが、11月中旬に実施された菅政権の「事業仕分け」第3弾で、観光庁が来年度予算で概算要求している各種事業が壊滅的な仕分けを受けました。
 着地型旅行商品流通促進支援事業、ユニバーサルツーリズムネットワーク構築支援事業、スポーツ観光支援事業はいずれも「廃止」。来年度における国際会議の開催・誘致の推進事業は「予算計上を見送り」。訪日旅行促進事業(ビジット・ジャパン事業)についても「予算要求を三分の一に縮減し、特別枠への要望分も見直し」。さらに観光地域づくりプラットフォーム支援事業は「予算要求の半滅、抜本的見直しが必要」という仕分け結果です。

地域主権の観光立国
 政府が「観光」を重視しているにもかかわらず、事業仕分けで観光庁の概算要求事業が壊滅的な仕分けを受けたのは真に残念です。「観光」に対して強い追い風が吹いているにもかかわらず、それを十二分に活かしきれずにダッチ・ロールを繰り返す「観光庁」という政府機関そのものが仕分けされるべきだ、という意見までだされています。
 日本ではすでに各府省が観光関連予算を投入して、それぞれなりに観光振興事業と取り組んでいます。ところが各府省は地域の状況を考慮せずに、各府省の都合でばらばらに事業展開を図っているために効果があがっていません。観光庁は観光立国政策のヘッドクォーターとして各府省の観光関連事業の総合調整を行い、日本の各地域が観光で元気を取り戻せるように尽力すべきです。
 民主党政権は「地域主権」をスローガンにしていますが、いまだに「霞ヶ関主権」を脱しえていません。観光振興は「地域主権」の実現なしには成就できません。今後の観光立国政策の動きを厳しく注視しなければなりません。