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地域経済(16) 経済を読む

安全と水はただ?
小樽商科大学
ビジネス創造センター 
 センター長・教授 海老名 誠



増える外国人投資 
 最近多くの報道で、外国人投資家が北海道の山林や軍事基地周辺の不動産を買っていることを伝えている。報道によれば、北海道の山林や不動産を購入しているのは主として中国人で、山林を購入する意図は水資源だと伝えている。また、千歳空港周辺の土地を購入するのは、外国のテロリスト関連団体の可能性もあるとの報道もある。
 私は、今年の正月は東京の自宅に戻っていたが、某テレビ局から上記の動きに対してコメントを頼まれ、インタビューに応じた。テレビ局の問いかけは、北海道では外国人の投資に関し制限を付ける条例を検討しているが賛成か反対か、というものであった。私は、その様な極端な問いかけ自体がおかしいとコメントした。これまで、私が調査・接触した外国人投資家の意図は違う。
 まず、外国人だけを差別するような法律や条例の制定はWTOの内外無差別原則に抵触する。水資源や軍事基地周辺の土地が、個人が自由に売買出来る対象となっているとすれば、それは外国人であれ日本人であれ、一律に公平な規制をかけるべきである。なぜなら、その不動産は日本国にとっての公共財だからだ。水資源や軍施設周辺の土地を、日本人であれば、個人でも自由に売買すべきと考えるのは危険である。

中国人の意図
 中国人が日本の不動産、北海道の土地を購入するのは、自国で不動産所有権が認められていないからだ。急速に経済発展が進む中国では、日本で想像出来ない位の大金持ちが続々と誕生している。世界中で共通の動きでもあるが、金持ちは財産を分散しようとする。自国の法律が変わっても、全ての財産を一瞬にして失わない様に分散して、将来の備えとするのだ。中国の富裕層は、子供や孫の代に残る財産を増やそうとしている。その一番の手当ては「教育投資」であり、今米国の大学や大学院に留学する中国人子弟が急増している。
 次に人気がある手当は「外国に保有する不動産」である。従って、その殆どは、北海道の「水資源」や「軍事基地に近い土地」を狙っている訳ではない。

緩い日本の法律
 それでは、何故近年になって大騒ぎになるのだろうか。それは、日本の不動産売買に関する制限や規制が、諸外国に比べて非常に緩いと言う事実が外国人投資家に知れ渡り、特に所有権が欲しい中国人富裕層のターゲットとなったからである。
 日本は、世界でも稀な平和で安全・クリーンな国だ。私は海外暮らしが長いので、商大の水道水でもそのままは飲めない。頭では安全・清潔と解っていても、つい毎日「ペットボトル」の水を買ってしまう。家に帰れば、必ず鍵を2重にかける。これは理屈ではない、体に染みついた自己防衛の慣習である。こんな安全な日本に暮らす事が出来る国民は本当に幸せである。外国投資家は、日本の土地売買の自由さを学び、こんな緩い規制で良いのかと心配している程である。グローバル化とは何も経済の問題だけではないのである。