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地産(6) 後志でなにが生産されているの

にしん味噌「にしんのおかげ」
一八興業水産 株式会社 専務取締役 紀 哲郎 氏



創業
 大正3年、初代、紀 伊右エ門(当時19歳)が新潟県佐渡郡から岩内町万代(まんだい)に渡り、一八紀伊商店を創業し、海産商、木炭商を営む。現在の社名の中に「興業」という水産加工会社では珍しい文字を使っているが、これは昭和19年に改組した際に付けられたもので、当時は水産加工以外の事業も行っていたことによるものだ。

「にしん屋」だから出来た、新商品の開発
 平成19年、江別の道立食品加工研究センター(以下、食加研)が岩内町に新たな加工技術を紹介しにやってきた。それは「魚肉発酵ペースト」というもので、魚を酵母で発酵させて製品を作る技術だった。魚で作った醤油を「魚醤油」というが、これは「魚味噌」といえるものだった。
 創業以来の主力加工品は身欠鰊や塩数の子、たらこ。しかし近年の食生活の変化により需要が鈍ってきた。ちょうどその頃、会社の将来の商品展開を模索していた時だった。翌年の平成20年、この技術を取り入れ、仕込みを開始した。食加研の職員が作れるのだからプロの加工屋にはなんなく作れるものと思っていたが、そこには落とし穴があった。
 魚の材料は鰊と決め、身欠き製品にならなかった折れたものなどを使うことにした。普段の加工品には、道内産の鰊は脂ののりがあまり良くないので、脂ののったアメリカ産を主に使って加工している。当然、旨くなるはずと思っていたが、予想に反して発酵がうまくいかず、失敗の連続。悩み、そしてプロの「にしん屋」としての挑戦意欲が更に沸き起こった。
 食加研の試作品を検証してみると、脂分の少ない鰊であったことが分った。そこで原料を道内産にしてみたが、味が淡白で納得がいかなかった。そこで考えたのがアメリカ産鰊と道内産鰊とのブレンド。両方の長所を引き出すことを追求した結果、脂分のコントロールによる発酵と旨さ両方を満足させるものとなった。創業以来、鰊の状態を見極めてきた「にしん屋」の経験がものをいった。

岩内独自の味に仕上げた海洋深層水
 商品開発にあたっては岩内海洋深層水が大きな力となった。この手法は食加研の技術指導にはなく、独自の発想だった。それは海洋深層水のミネラルが酵母を活性化させ、発酵を促進させる力を利用するものだった。実際に使ってみると、発酵が促され味もよくなったのだ。通常の塩を使って仕込んだものより、味も発酵も良かったという。こうしてオリジナル商品「にしんのおかげ」が誕生した。取り組みから1年後の平成21年8月だった。

「にしんのおかげ」登場
 一般的に「味噌」とは大豆や穀物を発酵させたものを言い、それ以外の原料を使ったものは「味噌」と言うことができない。商品化するにあたり、「さかな味噌」「にしん味噌」と一つの単語にするのは問題なかったが、「味噌」という文字を商品名に入れると消費者が「味噌」という概念にとらわれ、使い方が限定され、食べ方に広がりが出ないと感じていた。当初、市場調査の段階では「純醸にしん味噌」という商品名だったが、再度ネーミングを検討していく中で、会社の原点を考えてみた。創業以来、生(なり)業(わい)としていたものは何か、そして今、会社があるのは何のおかげなのか。その答えは鰊加工だった。95年間積み上げた加工技術、そして鰊に敬意を込めて、「にしんのおかげ」と改名した。

「にしんのおかげ」のおかげになるか!
 見た目も味もまさに「味噌」。通常の味噌と明らかに違うのは原料が鰊なので魚の旨みがあること。そのまま食べても決して魚臭くなく、温かいご飯や冷奴にのせたり、野菜につけたり、ドレッシングにしたりと幅広い使い方が出来る商品だ。
 現在、次のステップとして、鰊以外の魚種で魚味噌を作ることに挑戦している。完成すれば姉妹品として展開していくという。岩内の伝統的な水産加工技術と優良な地域資源を活用した新分野の商品開発といえる。今後この商品が普及していくには食べ方の提案が不可欠である。岩内の飲食店が積極的に地域の新たな食材として活用していくならば、必ず拡がっていくものと思われる。なぜならば「旨い」からだ。

一八興業水産 株式会社
〒045-0001 北海道岩内郡岩内町字大浜68-7
TEL(0135)62-1811 FAX(0135)62-1835
http://www.ippachi.co.jp/
E-mail:info@ippachi.co.jp
※「にしんのおかげ」は道の駅いわない・北緯43度(以上 岩内町)、道産食材HUGマート・大丸百貨店地下(以上 札幌市)、上記ホームページで購入することができます。価格は1ビン525円。