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観光学(4)  観光を読む

クール・ジャパンの磁力
北海道大学 観光学高等研究センター 
センター長・教授 石森 秀三


パブでダンスを楽しむ人たち(ウェリントン ニュージーランド)
パブでダンスを楽しむ人たち(ウェリントン ニュージーランド)

日本21世紀ビジョン
 経済財政諮問会議は2005(平成17)年に「日本二十一世紀ビジョン」の策定を行い、2030(平成42)年までの日本経済の将来像を明らかにしました。このビジョンでは文化創造国家の実現が提唱されています。
 文化創造力を高めて、世界の知的開発拠点や情報発信拠点になり、世界の人々を魅きつけるとともに、日本で働く外国人を大幅に増やし、経済統合を中心にしてアジア共同体の形成に貢献することを掲げています。その結果、2030年には訪日外国人数が4千万人に増えると予測されています。
 世界から数多くの外国人観光客を魅きつける国々はいずれも文化創造国家としても著名です。とくに第1位のフランスは8千万人を超える外国人ビジターを受け入れており、芸術や学術だけでなく、国民の生活文化創造という面でも魅力に溢れており、強力な磁力を有しています。

クール・ジャパン
 では、日本の場合はどうでしょう。日本の文化創造力を考える際に、クール・ジャパン(かっこいい日本)という考え方が重要になります。
 これは日本の大衆文化を評価するもので、ポップ・ミュージック、アニメ、ゲーム、マンガ、映画、ファッション、日本料理、建築、電子機器、キャラクターなどが諸外国で受容されていることを意味しています。
 要するに日本の大衆文化はすでに世界中に広まり、クール(かっこいい!)とみなされ、日常生活で活かされているかを問うものです。
 米国のジャーナリスト D・マックレイ氏は、2002年にグロス・ナショナル・クール(GNC…国民総文化力)という概念を提起して、大衆文化の面で見ると、日本はすでに世界第一の文化大国であると指摘しました。とくに、アジア諸国では日本の大衆文化が若者の間で広く浸透しており、ライフスタイルに大きなインパクトを与えていると述べています。
 20世紀の日本では欧米諸国の文化をクールとみなし、ライフスタイルの中に取り入れました。そのために欧米への観光旅行が好まれました。そう考えると、今後アジア諸国からより多くの人々がクール・ジャパンを楽しむために来訪してくれる可能性があります。日本人自身がクール・ジャパンの磁力に気づくべきです。

英国の事例
 英国の前首相トニー・ブレア氏は、1997年に44歳の若さで首相に就任しました。ニュー・レイバー(新しい労働党)や第三の道を標榜したブレア首相が真っ先に実行したのは「クール・ブリタニア政策」でした。
この政策は多重的な意義を担っていました。まず英国を「若者の希望や活気が渦巻き、多様な文化や新しいアイディアを生みだす社会」にするために、「クール・ブリタニア」を国家のブランドイメージに定めました。ついで、音楽、舞台芸術、美術、映画、各種デザイン、ゲーム開発、アニメ、広告、出版などの「クリエイティブ産業」を最重要産業と位置づけて育成しました。クリエイティブ産業をとおして「クール・ブリタニア」イメージを全世界に発信し、観光客誘致・投資誘致・移住促進などを図ることによって、英国をより多様な文化が共生するエネルギーに満ちた社会に変革することに成功しました。

日本との比較
 麻生首相はただ単に漫画オタクやオタク文化の理解者として個人的嗜好を表明しているだけですが、ブレア前首相は英国そのものを変革して活気づかせるために「クール・ブリタニア」や「クリエイティブ産業」を国家政策の中核に据えました。両首相を単純に比較すると、国家指導者として明確に国家発展の理念と戦略を示して、英国再生に取り組んだブレア前首相に軍配を上げざるを得ません。
 今後の日本において、クール・ジャパンが観光立国の原動力の一つになることは確実でしょう。